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「手伝わない」が当たり前 クレハの動画で話題、家事する夫

2020/8/19 19:32
クレハが公開する動画の一場面(クレハ提供)

クレハが公開する動画の一場面(クレハ提供)

 夫婦共働きが多くなっても「家事は女性の仕事」という価値観は根強い。新型コロナウイルスの影響による巣ごもりで、家事負担が増えた女性もいるだろう。そんな中「僕は手伝わない」という夫の一言で始まるメッセージ動画が注目を集めている。

 2分50秒の動画が描くのは、ある共働き夫婦の日常だ。夫が夕飯の残りをラップして冷蔵庫にしまい、皿洗いをするシーンから始まる。家庭用ラップ「NEWクレラップ」を販売するクレハ(東京)が、6月に動画サイト「ユーチューブ」やクレハの特設サイトで公開。SNSで話題になり、再生回数は560万回を超えた。

 動画で共感を集めているのは、淡々と家事に向き合う夫の姿だ。先に出社する妻を見送り、ごみを袋にまとめて娘を保育園へ。妻が出張した日は娘と夕食作り。食後の皿洗いの途中で娘と一緒に寝てしまった夫を、帰宅した妻が温かく見つめる。

 画面に出る文字は「僕は手伝わない」。「手伝う、じゃなくて僕もやるのが当たり前だと思うから」―。自分事として主体的に家事に関わっていることを、さらりとつぶやく。

 広島市西区の会社員女性(37)は「自分のもやもやの正体が分かった」という。これまでは夫に家事・育児を「手伝ってもらう」感覚だったが「子どもも生活もふたりのもの。一方に負担が偏るのはやっぱりおかしい」と感じた。動画には「助け合う」という理想の夫婦像が詰まっている。

 「夫婦が対等ですてき」と話すのは東区の契約社員女性(39)。夫の方が高収入なのもあり、家事を一手に担う。「仕方ないと受け入れていた私自身が性別役割分担に縛られていたのかもしれない」と気付いた。中区の会社員男性(36)は「出し忘れた生ごみや洗い物を残したまま寝てしまう姿に親近感を覚える。完璧さを求められない描き方で気が楽になった」という。

 「イクメン」「主夫」といった言葉がブームになる一方で、実際に多くの家事を担っているのは女性だ。

 内閣府の2020年版男女共同参画白書によると、共働きの夫婦世帯で妻が家事にかける時間は1時間59分で、夫の45分の2・6倍。小学生の子どもがいる世帯では3・6倍にもなる。

 コロナ禍で夫婦間の家事分担意識のギャップも表面化した。クレハが4月の緊急事態宣言後に在宅勤務となった共働きの20〜40代を対象に家事のシェアについて聞くと、約半分の家庭で妻が家事・育児の8割以上を担っていた。分担割合の満足度では夫84%に対して妻は60・5%。夫は「やっているつもり」、妻は「まだまだ足りていない」と認識のずれがある。

 動画の最後には、こんなメッセージが映し出される。「家族のカタチも仕事のカタチも変わったのだから、僕たちのカタチも変われるはず」―。家事を「夫婦が一緒にやる」日常は、コロナ時代の当たり前になるだろうか。(ラン暁雨)

 ▽在宅ワーク 変化後押し

 家族関係に詳しい県立広島大の沢田千恵准教授(52)=社会学

 家事・育児を「手伝う」という男性の言葉に反発する女性は多い。「主体性がない」「自分がやる仕事じゃないという意識がにじんでいる」からで、それを逆手にとったコピーが斬新だ。

 性別役割分担への違和感に加えて、コロナ禍の在宅ワークで女性の家事負担が増えたことも動画への共感につながった。仕事をしながら子どもの相手をし、掃除と洗濯、3度の食事作りに疲れ切ったワーキングマザーは少なくない。手洗い・うがいの呼び掛け、マスクの購入といった新たな「名もなき家事」も増えた。

 一方で、家で過ごす時間が長い在宅ワークは、男性の家事参加とワークライフバランスを進めるいい機会だ。オフィスと同じ働き方をすることにこだわらず、仕事の合間に夫婦で家事・育児をする「新しい生活様式」が定着するのか注目したい。

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