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潰瘍性大腸炎、正しく理解を 薬が大きく進歩、ストレスは大敵

2020/9/6 19:44
記者会見で辞任を表明した安倍首相。潰瘍性大腸炎を理由に挙げた(8月28日)

記者会見で辞任を表明した安倍首相。潰瘍性大腸炎を理由に挙げた(8月28日)

 ▽首相辞任の原因/下痢や下血など症状/病名だけで「戦力外通告」しないで…患者の声も

 安倍晋三首相が辞任を表明する理由になった潰瘍性大腸炎。厚生労働省の指定難病の一つで、下痢や下血などの症状が収まったり、ぶり返したりを繰り返す。だが、ほとんどの患者は薬で症状をコントロールできるようになってきた。患者からは「病名だけで『戦力外通告』する社会にしないで」と声が上がる。どんな病気なのか正しく理解したい。

 ■どんな病気?

 広島県内の患者たちでつくる広島炎症性腸疾患患者会(広島IBD)副会長の中元博和さん(68)=江田島市=は、40代後半に血便に気付いて以来、何度も襲ってくる便意に悩まされた。「トイレの回数が1日10回になることもあった。出血も続き本当に苦しかった」と振り返る。当初は痔(じ)の治療を受け、潰瘍性大腸炎と分かるまで2年ほどかかったという。

 炎症性腸疾患に詳しい広島原爆障害対策協議会健康管理・増進センターの上野義隆副所長によると、潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜が腫れたり、ただれたりする病気。下痢や腹痛、粘液を伴う血便などの症状が出る。発熱や体重減少がみられることもある。

 最初の発症は30代以下が多い。40年余りで患者数は急増し、2016年の推計患者数は約22万人。難病の特定医療費の受給者証を持つ患者は18年度末時点で約12万5千人に上る。

 原因はまだ解明されていないが、上野副所長は「異物から身を守る免疫の異常などで起こると考えられている」と話す。食生活が欧米化したり、抗生物質の使用が増えたりして腸内細菌のバランスが崩れたことも、患者の増加に影響している可能性があるという。

 ■進化する治療

 20年ほど前までは使える薬が限られ、大腸全部を取ってしまう手術を受ける人も少なくなかった。今も完治につながる治療法はないが、炎症を抑える薬は大きく進歩している。

 ほとんどの患者に用いるのが「5―ASA製剤」だ。炎症の抑え込みと、ぶり返し予防の両方に効果がある。その一つのアサコールは09年に登場し、薬の成分をうまく大腸で吸収できるように工夫したのが特徴。安倍首相は第1次政権の退陣後に復調できたのは、この薬が「画期的に効いた」からと医師との対談で述べている。1日1錠で済む薬も出ており、使える薬の幅は広がっている。

 症状の重い人には、強力に炎症を抑えるステロイドを用いる。ステロイドで治りにくいタイプでは、過剰な免疫反応を抑える薬を使ったり、炎症の原因となる白血球を取り除く治療をしたりする。腸内環境を改善するために便を移植する治療も研究されている。

 上野副所長は「ほとんどの人は必要な薬を飲めば、健康な人と同じように過ごせるようになった。重い症状の治療の選択肢も増えている」と強調する。

 ■周囲の配慮も必要

 病気がぶり返す最大の要因はストレスだ。東北地方では、東日本大震災後に再燃が目立ったという報告もある。上野副所長によると、外見から病気が分かりにくいため、周りの人の無理解な発言がストレスになることもあるという。「元気そうに見えるのに」「いつも席にいないね」「気のせいでしょ」…。中高生や大学生の患者も少なくなく、学校生活や就職時の配慮も欠かせない。

 広島IBDの中元さんは、安倍首相を「薬でうまくコントロールできていたが、激務による疲れとストレスがたたったのではないか」と気遣う。一方で、潰瘍性大腸炎の患者には、責任のある仕事を任せられないという勘違いが広がらないかと心配する。「患者が肩身の狭い思いをすることのない世の中になってほしい」と訴える。(衣川圭)

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  • グラフィック・大友勇人
  • 「薬による症状の管理が進んできた」と話す上野副所長(広島市中区)

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