くらし
コロナ禍… 近場に宿泊「ステイケーション」楽しむ
新型コロナウイルスの影響で遠出の旅行がしにくい中、近くに泊まって休みを過ごす「ステイケーション」を楽しむ人が増えている。ステイ(とどまる)とバケーション(休暇)を合わせた言葉。国の「Go To トラベル」キャンペーンなども後押しになり、地元の魅力の再発見につながっているようだ。
▽観光地の魅力を再発見
世界遺産の厳島神社がある日本三景の宮島(廿日市市)には何度も行ったことはあるが、泊まるのは今夏が初めてだった。呉市の布小物作家城戸小百合さん(55)は9月、知人ら4人と観光ルートとは離れた島内のホテルに滞在した。
波の音を聞きながら浴衣姿で海岸にたたずみ、十三夜の月が海に映るさまを眺めた。「島の自然に包まれるようで、すてきでした」。慌ただしく巡る日帰りだけでは分からない身近な観光地の魅力に、あらためて気付かされたという。
▽ホテル割安、リッチ気分
なかなか宿泊することがない近くのホテルでのステイケーションも注目を集めている。自宅から車で40分ほどのグランドプリンスホテル広島(広島市南区)に1泊した安佐南区の会社員堀江美由紀さん(47)は「憧れの場所でくつろげて、リッチな気分を味わえました」と喜ぶ。
広い部屋と大きな窓から見える瀬戸内海。両日ともホテルのプールで小学6年の息子(11)と遊び、くつろいだ。
背中を押したのは、国の「Go To トラベル」キャンペーンだ。ホテルの割引も併せて、普段は1泊約10万円する部屋に2万円足らずで泊まれた。新幹線や飛行機などの交通費もかからない。行き帰りの時間も短く、疲れにくい。「近い」ことのメリットは大きい。
安佐北区の郵便局員男性(36)は妻と廿日市市宮浜温泉のホテルでのんびりとした時間を楽しんだ。部屋のテレビで動画配信サイト「ユーチューブ」を見たり、浴室で近距離無線通信「ブルートゥース」で音楽を聞いたり。自宅でもできるようなことも、モダンな内装の部屋ですると気分が違う。
これまでは年に1、2回、東京や大阪など国内各地へ旅行していた福田さん夫妻。「観光しなくても、日常から解放されてリフレッシュできる」と、今後も県内でのホテルステイを考える。
▽古民家で昔暮らし大喜び
豪華なホテルにとどまらず、山あいの古民家での滞在も人気を集めている。広島市佐伯区湯来町の雲出集落にある築120年の家の週末の宿泊予約は、年内はすべて埋まっている。
家族4人で訪れた同市安芸区の矢野南小6年谷口凛さん(12)は、火をおこして羽釜で米を炊き、まきで沸かした五右衛門風呂にも入った。現地に行く途中には、車の前を横断する野生のサルに遭遇してびっくり。テレビもゲームもなかったが「他にいろんなことができて、楽しかった」。妹の同小4年優衣さん(9)と大喜びだった。
同集落の整備に取り組む「くもでを愛し守る会」の大田昭三会長(71)は「近くの地域にええところがいっぱいある。目を向けてもらえたらうれしい」と話していた。(文・二井理江、写真・安部慶彦)
<Go To トラベル> 新型コロナウイルス感染症で打撃を受けた観光業を支援する国の事業。国内旅行が対象で、1人1泊当たり2万円、日帰りは1人1万円を上限に、宿泊、日帰り旅行代金の50%相当が国から補助される。
9月末までの先行実施期間は、東京発着は対象外。旅行代金の35%分が代金から割り引かれる。10月1日からは東京発着も対象に加わり、残りの15%分も地域共通クーポンとして受け取れるようになる。
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