くらし

【この働き方大丈夫?】第5部 非正規公務員の嘆き<1>「嘱託さん」見下されてる感

2020/9/15
イラスト・大友勇人

イラスト・大友勇人

 国や地方自治体の公務員の5人に1人は非正規で働いていることをご存じだろうか。この10年で1.4倍に膨らんだ。多様化する住民ニーズに応えるため、現場では経験やスキルも要求されるが、待遇はなかなか改善しない。連載第5部は「非正規公務員」たちの胸の内に迫る。

 ▽窓口で十数年 昇給わずか

 「嘱託さん」。それが職場での呼び名だ。広島県内の40代の女性は、離婚後に役所の窓口で働き始めて十数年。嘱託職員の私の名前を、同僚の何人が知っているんだろう。「何のリスペクトもない。自己肯定感は地に落ちてます」とため息をつく。

 窓口には毎日多くの住民がやってくる。相談内容に耳を傾け、必要な書類を用意する。笑顔で、丁寧に―。「住民にとっては、窓口の私たちが『行政』ですから」。責任を持って仕事に向き合ってきたつもりだ。

 でも、現場に寄せられた声を基に業務の見直しを提案しても「嘱託さんはそこまでやらなくていい」とすげなく言われる。生活苦を訴える人のために支援制度を調べようとしたら「窓口は聞かれたことだけ答えて」。創意工夫は求められない。

 クレーム対応は「感情労働」なのに評価されない。「制度がおかしい」「税金取り過ぎだろ」と苦情やストレスをぶつけられ、神経を使う。いちいち怒ったりせず、なるべく共感しながら、分かってもらえるように細やかな説明を心掛けている。

 それでも、同僚からは「誰でもできる受付係」と軽んじられている気がする。「頭を使わない仕事でいいね」「試験に合格した公務員と、非正規では待遇が違って当然」と、平然と言い放つ正職員もいる。

 公の機関は「より働きやすく」「差別をなくそう」と呼び掛ける側のはずだ。でも実際には、自分たち非正規が見下されているような感覚がぬぐえない。

 1日6時間の勤務は濃密だ。窓口と電話対応、書類仕事をこなし、新人のフォローもする。その対価は、手取り月12万円ほど。正職員の3分の1しかない。十数年たつのに昇給もほとんどない。「ただの事務補助に『経験値加算』は要らないだろ」。かつて正職員から投げつけられた言葉が忘れられない。

 窓口業務の扱いに理不尽さを感じているのは、国が運営するハローワーク(公共職業安定所)の相談員も同じだ。

 原則1年更新で働き、3年目は任用試験を受け直さないといけない。自分も不安定なのに、仕事を探す人の就職を支援する―。カウンターを挟んで、やりきれなさをぐっとこらえる相談員は少なくない。

 「あすは、わが身…。そんな思いで、やりがいを持って働けるんだろうか」。中国地方のハローワークの正職員男性は、非正規の相談員たちをおもんぱかる。

 経験が求められる仕事という。相談窓口に来る人の歩き方、表情…。つぶさに感じ取って一人一人に寄り添い、新たな仕事につないでいく。「一朝一夕ではこなせない。正職員を補助するような容易な業務でもありません」

 誰が切られるのか―。更新時期が近づくと、男性の気持ちもざわつく。相談員たちのつらい胸の内が耳に入ってくるからだ。効率的に仕事をしていると評価されているか。上司に嫌われていないだろうか…。周囲の目に過敏に反応してしまうのは、不安の裏返しに違いない。

 男性はつぶやく。「日本の雇用政策の最前線を担う働き方が、これでいいんでしょうか」

 ▽地方でも5人に1人 行政スリム化に伴い

 非正規公務員は、公共サービスの担い手として欠かせない存在となっている。国の場合は約15万人に上り、職員全体の36%を占める。地方自治体でも10年ほどで1・4倍の約64万人に増えた。今や公務員の5人に1人が非正規で働く。4分の3は女性だ。

 なぜ増えたのだろう。最大の理由は財政難だ。人口減などで税収が細る中、人件費を抑え、行政のスリム化を図る動きが止まらない。民間企業と同じように「安い」労働力として非正規職員が重宝されている。

 実際、正職員は劇的に減らされた。国では郵政民営化(2007年)など大なたが振るわれ、80万人台から26万人台に。地方自治体でも「平成の大合併」や業務の外部委託が進み、ピークの328万人(1994年)から55万人も減った。

 ただ、住民ニーズの多様化に伴い、公的サービスに求められる役割は広がっている。最前線で住民を支え、負担の大きい業務を担う非正規公務員もいるが、正職員との給与格差は依然として大きい。

 こうした中、4月から非正規の大半を「会計年度任用職員」とし、自治体は期末手当(ボーナス)を支給できるようになった。法改正に伴う制度改革だ。しかし、手当を払う代わりに月給を減らす自治体もある。「低収入のままだ」「同一労働同一賃金には程遠い」。変わらない実態を憂う声は少なくない。(ラン暁雨、林淳一郎)

 【待遇などへの疑問 お寄せください】

 仕事量に待遇が見合っていない。正職員から下に見られる…。働き方に疑問を感じている非正規公務員は多いようです。皆さんの体験を聞かせてください。連載へのご意見、ご感想もお待ちしています。匿名希望の場合も連絡先をお知らせください。

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