くらし

【この働き方大丈夫?】第5部 非正規公務員の嘆き<2>「やりがい搾取」限界寸前

2020/9/16
イラスト・大友勇人

イラスト・大友勇人

 「夫から逃げたい。助けて」。休日も正月も真夜中にも着信は鳴る。女性たちからのSOSに気付けるよう、広島県内の女性(52)は携帯電話を肌身離さず持っている。

 ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者たちを支える婦人相談員になって7年。最前線で経験を積んできた。なのに自分の足元はおぼつかないまま。最近つくづく思う。「これって『やりがい搾取』じゃない?」

 ▽無償・自腹、相談24時間

 勤務は週30時間。時間外の相談は全てボランティアだ。夫に隠れて深夜にしかやりとりできない人も多い。「家を出て経済的に大丈夫かな」「連れ戻されるのが怖い」…。時間を問わず不安の声を受け止める。「命が懸かっている。相手の人生に寄り添う覚悟でやっています」と話す。

 支えるのは難しい。配偶者や恋人の元から逃がして終わりじゃない。避難場所や離婚、就職、子どもの転校をどうするか。揺れる被害者の心理を踏まえ、どう声を掛けるか。知識を得るために、全国各地の勉強会に参加してきた。

 でも、経費は使えない。休みをつぶし、自費で出掛ける。手取りは月約10万円ほど。費用を捻出するために、飲食店のアルバイトと電話相談員のトリプルワークをしている。

 そこまで情熱を傾けるのは、かつて自分自身がDV被害者だったから。相談機関につながり、生き直すことができた。親身になってくれる相談員に出会えるかどうかで人生が変わる。だから恩返しがしたい。自分を頼ってくれる被害者の力になりたい。

 その情熱を、行政に利用されているんじゃないか―。先日、過労で倒れ、そんな思いが胸に渦巻いた。「もう限界かなって。相談者を守るより前に、まずは自分自身を守る環境が必要です」

 中国地方の自治体に勤めて十数年になる別の婦人相談員も、やりがいを感じる一方、もどかしさを抱きながら働いている。

 DV相談の現場は多忙だ。勤務は週30時間と決められているが、「残業」をせざるを得ない日も少なくない。急な電話相談や来所への応対、被害者の同行支援、県などとのケース会議…。ルール通り、残業した時間分だけ平日に休みを取ると、仕事が回らなくなる。被害者のサポートがおろそかにならないか、気が気でない。

 それでも踏ん張るのは、「心からよかった」と実感することがあるからだ。暴力を振るう夫の恐怖から妻や子どもを引き離して保護にこぎ着けたとき、ほっとした表情に出合う。「わずかでも一歩を踏み出す後押しができて、私も胸をなで下ろすんです」。その瞬間は何物にも代え難い。

 しかし、正職員の上司からは、自分たちと同じような「被害者を助けたい」という熱意を感じられない。

 ミーティングで他機関との連携を求めても「検討しとく」とそっけない。文書で提案してもほったらかし。「非正規の意見は、軽くみられているんですかね」。上司は数年で異動になる。奥の席に座り、被害者の生の声に触れることもない。「DVに詳しくないから」という返答にしばしばがくぜんとしてしまう。

 くじけず使命感を持って奮起するものの、疑問が拭えない。手取りは月15万円に届かない。「自分たちが燃え尽きたらどうなるんでしょう」。全国でDVや児童虐待の痛ましい事件が起きるたび、危機感が募る。(ラン暁雨、林淳一郎)

 ▽DVや離婚、内容多岐

 婦人相談員が対応する相談の内容は多様化している。厚生労働省によると、2016年度は全国で7万9423人が来所して相談。家族や交際相手からの暴力に関するものが、ほぼ半数を占める。ほかに離婚や経済関係、ストーカー被害の相談もあった。

 もともと婦人相談は、売春防止法(1956年)に基づいてスタートした。その後、ストーカー規制法(2000年)やDV防止法(01年)の施行に伴い、相談の対象も広がってきた。

 相談員は17年度、中国地方5県の91人を含めて全国で1447人。うち8割は非正規で働いている。

 【婦人相談員の現状、どう思いますか】

 DV被害者の命と人生を背負っているのに待遇は低いまま。相談員を続けるためにアルバイトをする―。葛藤を抱えながら働く婦人相談員の現状をどう思いますか。ご意見をお待ちしています。匿名希望の場合も連絡先をお知らせください。

メール kurashi@chugoku-np.co.jp 「働き方」係
郵送 〒730―8677中国新聞くらし「働き方」係
ファクス 082(236)2321 中国新聞くらし「働き方」係
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【この働き方大丈夫?】第5部 非正規公務員の嘆き
<1>「嘱託さん」見下されてる感
<2>「やりがい搾取」限界寸前
<3>「穴埋め」のはずがブラック

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