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【起立性調節障害 進まない理解】<上>当事者の苦悩 腫れ物扱いでSOSも出せず

2020/10/4
「ODのことを、もっとみんなに知ってほしい」と話す中学2年の女子生徒(広島市)

「ODのことを、もっとみんなに知ってほしい」と話す中学2年の女子生徒(広島市)

 ▽外見から分からぬ病気「何でって、戸惑われるのが怖い」

 朝起きられなくなったり、立ちくらみがしたりする起立性調節障害(OD)。思春期に発症しやすく、学校に行けなくなる子どもたちも少なくない。ここ10年で病名は知られるようになったが、学校現場の対応はなかなか進まない。当事者たちの声から、どんなサポートがあればいいのか考える。

 クラスメートはみんな、病気の名前は知っている。1週間ぶりに学校に行くと、先生や友達が心配してくれる。「大丈夫かな」「しんどくないの?」―。広島市に住む中学2年の女子生徒(14)は、周りの気遣いに感謝する半面、腫れ物に触るような対応に胸が痛む。「私にどう接すればいいか、みんなきっと分からないんです」

 朝、頭全体が締め付けられるような痛みがして起きられない。ふらついて制服のボタンが留められない。そんな体の不調に加え、この病気にはもう一つのつらさがある。外見からはどこが悪いのか分からない。だから、SOSを出しにくい。「えっ何でって、戸惑われるのが怖いんです」

 本当は助けが欲しい。休んだ日のノートをコピーさせてもらえる友だちを持ちたい。テストの日程や時間を考慮してほしい。授業や課題提出がオンラインでできたらいい。何より「浦島太郎」にならないようにクラスの情報を知っておきたい…。いろんな思いを結局こらえ、言ってしまう。「全然大丈夫だよ」

 ODは珍しい病気ではない。日本小児心身医学会によると、軽症も含めると小学生の約5%、中学生の約10%が発症する。学会は病気への理解を広めようと、2005年に診断と治療のガイドラインを作成。本やテレビ、新聞で取り上げられる機会が増え、病名は少しずつ知られるようになった。

 治療の第一人者で約1万人の患者を診てきたOD低血圧クリニック田中(大阪市)の田中英高院長によると、この10年で当事者の遅刻や保健室登校を認める学校はずいぶん増えた。「怠け」と誤解されることも減る傾向にはある。だが、病気と知っていても、その子にどんな配慮が必要かまで落とし込んで対応をしている学校は少ない。

 田中院長は「患者の担任になって初めて症状を知り、個人で手探りの対応している教員がまだ多いのではないでしょうか」と指摘する。

 岩国市に住む中学1年の女子生徒(12)は、小学6年のとき、家まで誘いに来た担任の熱意がつらかったと話す。朝起きると動悸(どうき)や頭痛がひどくて学校を休むようになった。ODかどうか、まだはっきりしなかった頃。担任は毎日電話をかけてきた。

 さらに、今度は家に迎えにやってきた。2日続けて来た日、母親(52)は「先生に申し訳なくて、学校に行かせてしまった」と悔やむ。ストレスが加わると症状は悪化してしまう。夕方、女子生徒は疲れ果てて帰宅。翌日から登校しようとすると体が拒否反応を示し、不登校になった。

 女子生徒は「家に帰りたかったけど言えなかった。つらかった」と振り返る。ODは、周りの期待に応じようとする性格の子どもがなりやすい。母親は「先生が努力してくれるのは分かる。ただ、それが裏目に出ることがあるんです」と訴える。女子生徒は中学入学後も学校への拒否感が強く、欠席が続いている。

 この女子生徒のように、不適切な関わりによって症状が悪化するケースは後を絶たない。うつ症状や不登校など、本来の症状とは異なる2次的な問題が起こり、社会復帰が難しくなる例も出ている。

 しかし、田中院長は「重症でないODは、適切に治療すると、8割が3年以内に日常生活が送れる程度に回復します」と強調する。投薬のほか、大切なのは早寝や適度な運動を心掛けるセルフケア、ストレスの少ない環境づくりだ。「中でも子どもが長時間過ごす学校の影響は大きい。もっと変わってもらわないと」(標葉知美)

 ▽教員や同級生の理解広げるには

 ODについて教員やクラスメートへの理解をもっと広げるにはどうすればいいでしょう。当事者や親から求めることや教員の立場から伝えたいことはありますか。連載へのご意見、ご感想もお待ちしています。匿名希望の場合も連絡先をお知らせください。

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