くらし

中国地方にあるオンリーワンの地域ワイン

2020/10/14

 規模は小さくても、地元のブドウでオリジナルのワインを醸す。そんな個性派ワイナリーが中国地方で相次いで誕生している。少量でもワインを造れる国の規制緩和などを背景に、2015年度以降だけで11カ所にでき、さらに増える勢いだ。これから新酒シーズン。きらりと光る「地域ワイン」と出合い、グラスを傾けてみては―。(林淳一郎)

 ◎街中、ふらり立ち寄って 福山わいん工房(福山市)

 JR福山駅から南へ歩いて10分ほど。全国でも珍しい商店街にある小さな「まちなかワイナリー」だ。2016年にオープンし、古川和秋さん(36)がスパークリングワインを中心とした醸造に精をだす。

 「とにかく身近なワイナリーにしたくて」。予約すると、醸造などの様子を見学できる。というのも、ワインの消費は首都圏や関西が圧倒的。「まずは福山ならではのワインを知ってもらい、気軽に味わってほしい。ゆくゆくは産地といわれるようになれば」。水―土曜の夜は併設するバーにふらりと立ち寄って自社製ワインを楽しめるのも、駅などに近い「まちなか」の強みだ。

 しかも、福山はブドウ栽培が盛ん。蔵王、瀬戸地区から主力のマスカット・ベーリーAを仕入れるほか、自社農園でも育てている。

 新酒は今月末ごろから順次売り出していく。「ほんのり甘くて、イチゴのような香り。福山のブドウの特長を余すことなく込めたワインを、ぜひ」

 ◎地元料理と風味マッチ 瀬戸内醸造所(竹原市)

 目指すのは、フランス語にちなむ「テロワール(風土)」の表現だ。代表の太田祐也さん(36)いわく「ワインも地酒」。土地ごとの料理に合わせると、いっそう味わい深くなるという。

 竹原、三原市はともに古くからブドウ産地として知られる。竹原産のキャンベルを使ったロゼワインは、フライドポテトなどとマッチする。三原産のマスカット・ベーリーAを仕込んだ赤ワインは、特産のタコのカルパッチョなどと驚くほど合うという。

 2018年から石川県内のワイナリーに醸造を委託し、今年も9月末に新酒を発売した。来秋からは、瀬戸内海を一望できる三原市須波地区にできるワイナリーで自社醸造に乗り出す。レストランも備え、瀬戸内の味を満喫してもらう。

 太田さんは「地域の農と料理をワインで結び、新たな食の楽しみ方をアピールしたい」と意気込む。

 ◎ファンとつながり、密に 周防大島ワイナリー(山口県周防大島町)

 「造り手に共感してくれるコアなファンを増やしたい」。ブドウ栽培と醸造を担う松本英也さん(48)が志すのは、ワインを通して理解し合える関係づくりだ。

 微発泡や、たるで熟成したワイン…。年間会員になるのを勧め、丹精込めた新酒を届ける。「どんな味になりそう?」。待ち望むファンの声は励みになる。

 海から程近い畑で、日本固有のヤマブドウから生まれたヤマ・ソービニオンの栽培に力を入れる。山梨大でワイン造りを学んだころからの「愛着ある」品種。海外ワインに近づけるのではなく、日本の風土に合ったブドウで醸造する―。その信念で、2018年に父の古里・周防大島にワイナリーを構えた。

 今季の販売は12月末ごろから。直売もするが、車で訪れる人が多く、試飲は遠慮してもらう。代わりに、ワイン造りにかける思いを伝える。どうブドウを育て、醸造するか。「小さなワイナリーだからこそできる密なつながりを大切にしていきたい」と熱く語る。

この記事の写真

  • 商店街にあるワイナリーの前で、自社製ワインを手にする古川さん(福山市)
  • 三原市高坂町の農園で今季のブドウの出来具合を語り合う太田さん(左)
  • 木のたるに仕込んだヤマ・ソービニオンをかき混ぜる松本さん(山口県周防大島町)

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