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【この働き方大丈夫?】第6部「女性活躍」が重い<2> 「配慮」のつもりが「排除」に

2020/10/28 19:04
イラスト・大友勇人

イラスト・大友勇人

 ▽反発に驚く男性上司

 どこに「地雷」が埋まっているのか分からない。「リハビリ期間だから、くれぐれも無理せずに。慣らし運転でいいから」。育休明けの女性社員にそう言ったのは失敗だった。広島市の50代の管理職男性は「配慮のつもりだったのに裏目に出ました。勘弁してほしい」と苦笑いする。

 女性活躍を推し進める会社からは、子育て中の女性を上手にマネジメントするように言われている。慣れない子育てと仕事の両立は大変だろうと、負担が少ないルーティンワークや補助的な業務を頼んだ。でも、彼女には要らぬおせっかいだったよう。「やりがいを感じられない。私は会社に必要とされていないのかも…」。同僚に漏らした声が耳に入り、驚いた。

 忙しそうな同僚を手伝いたくても「大丈夫だから、早く帰った方がいいよ」と言われ、真面目な彼女は「期待されていない。排除されている」と受け止めたらしい。「リハビリ」という言葉も気に触ったようで、「出産を病気か何かのように扱うのはやめてほしい」とムッとされた。

 この男性が、自分の行動は「慈悲的性差別」に当たると知ったのはつい最近だ。「配慮したつもりが差別だなんて。子育て中は仕事の負担を軽くするべきだという思い込みがありました」と肩を落とす。負荷が少ない業務ばかりでは成長が滞るし、やる気もそいでしまう―。「確かに正論ですけどね」と、男性はため息をつく。

 広島県内の大手企業の人事部には、似たような相談が多く寄せられる。担当者は「すれ違いの原因は意思疎通の不足」とみる。子育て環境と仕事へのスタンスは人それぞれ。「一律に負担を軽くするのではなく、個々の状況を見極めながら本人がどんなキャリア希望を持っているかを共有すべきです」と話す。

 中には、子どもや家庭の事情から「重い仕事」は避ける女性もいるから難しい。市内の別の管理職男性(54)は頭を抱える。時短勤務の部下に日帰り出張を打診したら「ハラスメント」と訴えられたのだ。

 他の人は忙しかったし、彼女のキャリアアップも考えてのことだった。それなのに「時短と知っていて、なぜ出張させるのか」と猛反発された。てっきり「はい」と答えるものだと思ったのに。

 彼女は「男性には分からない」が口癖で、手間がかかりそうな仕事は「無理です」「できません」と断る。繁忙期でも悪びれず子どもの行事などを理由に有休を取る。下手に注意して休職でもされたら「管理職失格」の烙印(らくいん)を押されそうで怖い。

 一方で、女性ばかりちやほやする会社に、不信感が募るケースもある。女性登用を進める流通大手で働く岡山市の男性(32)は、20代後半で管理職になった後輩女性の人事に納得がいかない。

 実力も経験も不十分。企画書は雑だし、何度も取引先を怒らせて担当を外された。内示を聞いて「何であいつが?」と部内がざわついた。これまでどんなに優秀な人でも昇進は30代。管理職を見据えて結果を出してきた同僚男性たちの、ポストをさらわれた悔しさは尋常じゃなかった。

 社内では数年前から「女性管理職3割」という国の目標に合わせた数値を設定。達成するために女性を「飛び級」させて即席管理職をつくり出していると聞いていた。「『ガラスのハイヒール』ってやつです。強引に昇進させても、女だから得したと見られるだけ。本人も周りも不幸ですよ」

 腹は立つが、気付いたこともある。長い間、日本企業では男性を優先的に昇進させてきたし、能力にもばらつきがある。「それを不公平に思う女性の気持ちが少し分かりました。結局は男女関係なく、有能な人を登用すべきですね」(ラン暁雨)

 ▽女性には軽い仕事?

 男性は子育て中の女性に過剰に配慮する傾向があるようだ。ハラスメントのない職場づくりを推進する「21世紀職業財団」の2015年の調査でも、それが浮き彫りになった。

 調査は企業10社の管理職866人に実施。「育児中の女性に責任の重い仕事をさせないようにしている」という質問に、「している」か「まあしている」と答えた男性管理職は7割以上。一方、女性管理職では5割に満たなかった。

 若手社員1348人への「出産後にどのような働き方を望んでいるか」という質問には、女性社員の4割近くが「出産前と同じ」を選び、「責任や仕事内容を軽くしたい」を上回った。子育て中の女性たちが必ずしもマミートラック(お母さん向けコース)を望んでいないことが分かる。

 【職場の「すれ違い」お寄せください】

 育休から復帰後、男性上司からの過剰な配慮に戸惑ったことはありませんか。逆に子育て中の女性部下のマネジメントに困った経験はないでしょうか。皆さんの職場で起きた「すれ違い」を教えてください。匿名希望の場合も連絡先をお知らせください。

メール kurashi@chugoku-np.co.jp 「働き方」係
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ファクス 082(236)2321 中国新聞くらし「働き方」係
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【この働き方大丈夫?】第6部「女性活躍」が重い
<1>育児に仕事、何役すれば…
<2>「配慮」のつもりが「排除」に
<3>「ボーイズクラブ」に違和感
<4>今は主婦、同期がまぶしくて
<5>先輩3人に聞く

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