くらし
【この働き方大丈夫?】第6部「『女性活躍』が重い」に反響
連載「この働き方 大丈夫?」第6部「『女性活躍』が重い」に、読者から無料通信アプリLINE(ライン)やメールで多くの反響が寄せられた。共感の声や働き方への疑問が相次いだ。(ラン暁雨)
▽妻任せの男性に言われても
■ワーママの嘆き
仕事と育児に疲れ果てるワーママ(ワーキングマザー)の記事に「自分のことかと思った」とラインで寄せたのは、2人の子どもを育てる中国地方の正社員女性。子どもが熱を出すなどして仕事を早退するたび、同僚たちの視線が痛い。営業職の夫に「早く帰って来て」「週1日でもお迎えを代わって」と頼んでも答えはいつも「無理」。常々、不公平と感じる。
複数の上司から「残業できないなら朝早く来ればいいじゃん」と言われたが、朝も家事育児で忙しいのが分からないらしい。「家のことは全部妻任せなんでしょうね。そんな男性や政治家が進める女性活躍なんて絵空事ですよ」と不信感を募らせる。
広島市内の会社員女性(38)も「私と一緒。朝起きた瞬間に家事が始まり、保育園の送迎、仕事。帰宅後はワンオペ育児と家事が待っている。1日15時間くらい何かに追い立てられている」とため息をつく。長時間労働の是正もせず、活躍の名目で女性が輝くことを求められる風潮に「負担が増えただけ。労働力を搾取され税金を生み出すマシンみたいで、何のために生きているか分からなくなる」と嘆く。
▽勝手に「弱者」認定しないで/不公平感から分断生まれる
■職場内のすれ違い
ワーママに過剰に配慮する上司との「すれ違い」が生じているケースもある。2歳の娘を育てる広島市南区の公務員女性(35)は、育休からフルタイムで復帰後、出張や責任ある仕事を外されて納得がいかない。
同居の両親からはサポートが得られる。キャリアアップのために経験を積みたいし、ワーママが使いにくいと同僚に思われるのも不本意だ。勝手に「弱者」認定して「負担を減らしとけば文句ないでしょ」という本音が透ける上司に「個々の事情に合わせたマネジメントをして」と訴える。
広島県内の製造業の会社に勤める50代の管理職男性は「女性には配慮すべきだ、という思い込みは可能性の芽を摘む」と気付いた。社内では、職人肌が多い製造現場と接する部署や残業が多い部署は「過酷」という理由で女性を外す不文律があった。でも最近は「難しい仕事に挑戦したい」という声に応じ、適性を見極めた配置を心掛けたいと話す。
子どもがいる女性が増えた企業で人事を担当する30代女性も「仕事が物足りない」と感じているワーママは少なくないと言う。「子育て中だから、できない」というレッテルは成長を阻むと指摘。「大切なのは『働きがい』。働きやすさだけでは、フォローする側の不公平感が高まり、職場の分断が生まれます」
子育ての「聖域化」に不満を抱く人もいる。広島県内の既婚女性(53)は「同性ながらワーママは迷惑と思うことが多い」とメールにつづった。会社からの配慮は「当たり前」で、時短や休暇を「取らねば損」という姿勢で使うなど、仕事へのプロ意識が乏しい。何か言うと「子なし」のひがみのように受け取られるし、ハラスメントと攻撃されかねない。「女性活躍ってワーママ以外は恩恵ないですよ」と眉をひそめる。
▽政策と裏腹 子育て中は敬遠
■再就職の壁
女性活躍から取り残されていると感じる主婦も多い。広島市西区の女性(35)は「家にいて何してるの、と聞かれることが増え、肩身が狭い」と憂う。職探し中だが、面接で子どもが体調を崩すことがあると伝えるたび、担当者は迷惑そうな顔をする。福山市の主婦(37)も次女が幼稚園に入る来春の再就職を目指すが、やはり一番に聞かれるのは子どもが病気をしたときの預け先だ。「輝けという割に、子育て中の女性は敬遠される。環境整備は後回しです」と憤る。
「スキルアップのために若い頃から自己投資して」と勧めるのは、広島市西区の派遣社員女性(54)。結婚を機に退職し、東京から転居した。再就職を見据えて簿記の資格を取り、職業訓練校でパソコンのスキルを磨いた。今はフルタイムの事務職に就いている。
安佐南区の30代女性は連載を読んで「結局は男性社会の『一枠』としての女性活躍でしかない」と感じたという。職場でも会議中の昼食では女性1人で、他の男性に合わせて短い時間で食べ終わるように言われる。「組織ではまだ少数派。管理職も男性ばかりで声を上げにくい。女性を一定の割合で採用するクオータ制なども検討してほしい」と望んだ。
▽長引くコロナ 生活に影響は
長引く新型コロナウイルス禍で、仕事を失う人も増えています。皆さんの生活にどんな影響が出ていますか。
メール kurashi@chugoku-np.co.jp 「働き方」係
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