• トップ >
  • くらし >
  • くらし >
  • 【コロナ禍と介護】認知症の世界にお邪魔してみる 広島の施設長・植さん、近著で接し方助言 

くらし

【コロナ禍と介護】認知症の世界にお邪魔してみる 広島の施設長・植さん、近著で接し方助言 

2020/11/19

 すぐ怒る。とっぴな行動をとる…。そんな認知症の人たちの言動に「ちょっとだけ振り回されてみませんか?」。広島市安佐南区のみのりグループホーム川内の施設長を務める植賀寿夫さん(41)は、近著で呼び掛ける。新型コロナウイルス禍が長引く中、在宅ケアの負担に悩む家族も少なくない。ケアする人・される人のいらいらを和らげるには、どんな接し方が大切なのだろう。

 ▽「うん、うん」同調 否定せず

 認知症になると、物忘れや判断力の低下に加え、さまざまな症状が表れる。暴言や一人歩き、幻覚…。そのたびにケアする側は、やめるよう誘導しがちになる。「それがすれ違いを生んで互いに感情的になり、心身ともに疲弊してしまう」と植さんはみる。

 みのりグループホーム川内には、認知症の高齢者18人が入居している。コロナ禍で3月から家族との面会は禁止に。入居者も原則、外出できない生活が続く。

 このため電話と手紙で家族に近況を詳しく伝え、8月ごろからオンラインによる画面越しの「面会」も始めた。それでも入居者の心労は増している。「家族に会いたい」と涙をこぼしたり、寝られなくなったりする人もいる。

 在宅でケアする家族の負担も大きいようだ。広島大が8月に発表した全国調査の結果によると、介護サービスの利用控えなどが広がり、21・7%が「体調不良になった」と回答。「抑うつ気味になった」も27・5%に及んだ。

 ケアする人・される人がぶつからず、穏やかに過ごすにはどうすればいいのだろう。植さんのアドバイスは、認知症の人の振る舞いを「否定しないこと」。それは「ちょっと振り回されてみること」でもある。

 時間のゆとりがあるときだけでもいい。理不尽と感じても「うん、うん」と同調する。言葉の数を減らし、大声ではなく、ゆっくり語り掛ける。「認知症の人は『別の世界』を見ていると割り切ってほしい」と植さん。「『敵』になるのはよくない。そばに『頼れる人』がいる安心感が大切なんです」と話す。

 植さんたちにも経験がある。ある日、入居者の男性が箸を手に持って振っていた。別の物を渡すと「話にならん」。さりげなく言葉を交わすうち、魚釣りだと分かったという。

 認知症の症状だけを見るのではなく、その人の世界に少しお邪魔する―。「こういう人だとあらためて知る。遠回りのようでも、すれ違いをなくし、互いがいらいらしないための近道になる」と植さん。自らの成功・失敗談を踏まえて、6年がかりで著書「認知症の人のイライラが消える接し方」をまとめた。

 コロナ禍の中で気掛かりなのは、在宅ケアに悩む家族だ。「八方ふさがりにならないで、家族も『頼れる人』をつくってほしい。私たち介護職もいる。一緒に困って考えることが、認知症の人とのいい関係づくりにつながるはずです」(林淳一郎)

    ◇

 「認知症の人のイライラが消える接し方」は講談社刊。四六判、226ページ。1540円。

この記事の写真

  • 植さんの著書には経験談に基づくイラストも満載(C)=秋田綾子
  • 「失敗もしながら、認知症の人との接し方が少しずつ見えてきた」と話す植さん

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

くらしの最新記事
一覧