くらし

【この働き方大丈夫?】第7部 長引くコロナ禍の中で<下>就職浪人、親に言えなくて

2020/12/17 20:13
グラフィック・大友勇人

グラフィック・大友勇人

 秋も深まり、少し寒くなってきた10月。下宿先のベッドに腰掛け、実家に電話しようと思うのに、発信ボタンを押せない。広島県内の男子学生(22)は「就職浪人」することを、親にしばらく報告できなかった。「情けないし、心配掛けたくないし。コロナがなければ、こんなに苦労しなくて済んだんですかね」

 ▽「売り手」一変、怒り

 就活の風景は、1年前とはまるで違うものになっていた。説明会も選考も延期続きで、ペースがつかめない。ウェブ面接にも足がすくんだ。回線が不安定になると、シャツがぬれるくらい冷や汗が止まらなくなった。「僕、それでなくてもコミュ力ないのに…」。ウイルスがもたらした激変に付いていけなかった。

 大学の授業はオンラインで友達と会えず、相談もしにくい。週2日のバイト以外は家から出ない。一人きり、もんもんと眠れない夜が続き、気分が落ち込んだ。ついに心が折れたのは、ネットの書き込みを見た時。企業が採用を絞り「学歴フィルターが鮮明になっている」とか。それなら自分は大学名で門前払いされる―。「もう駄目だ」とスマホを放り投げた。

 空前の「売り手市場」だった昨年に、妬みすら覚える。先輩たちは「夏前には決まる」と言っていたのに。受けた企業の大半から採用された「内定長者」もいた。たった1年の差で見る景色が全然違う。「何で僕は今年が就活なんだよって…。ついてない」。卒業したらバイトしながら、就活をやり直すしかない。

 内々定を取り消された人もいる。広島市の女子学生(22)は今春、撮影モデルをしたことがある美容関係の企業から「ぜひうちに入社して」と誘われた。希望の業界に早々に決まったと喜んだのに、夏に担当者から電話で一方的に言われた。「新卒採用する余裕がない。あの話はなかったことにして」

 感染拡大で客足が遠のき、急激に業績が悪化したという。「今更言われて、どうしろっていうの」。頭が真っ白になった。約束違反と抗議すると「じゃあ君はコロナの影響を予想できたわけ?」と開き直られた。悔しすぎて涙も出なかった。

 「内々定が一転、NNT(無い内定)ですよ」と、女子学生はため息交じりに言う。「こっちは人生かかっているのに無責任すぎる」。怒りは収まらないまま、再度の就活のために髪を黒く染め直し、出費がかさんでまた腹が立った。

 同級生が卒論を書いている傍ら、通年採用の企業を探し、一人きりの就活。内定した友人から「大丈夫?」と聞かれると、もやっとする。内定の優越感をちらつかせる「就活マウント」を取られたようで。「卒業まで3カ月。年内に決めないと」と焦りが募る。

 中国地方の大学でキャリア相談を担当する男性は、「地方の私立大ほど、コロナの打撃を受けやすいんですよ」と明かす。飲食や小売りなどサービス業への就職が多いからだ。今もまだ相談の予約が相次いでいるという。

 別の大学の教員は「支援したいですが、コロナ禍の中では難しい」と悩む。大学に来る機会が減った学生の状況はつかみにくい。「コロナ世代、という第2の就職氷河期が生まれるかもしれません」。心配しながら、グループLINEで激励の言葉を発信している。(ラン暁雨)

 ▽企業の採用意欲、低下

 「売り手市場」と言われた新卒の就活に逆風が吹いている。広島労働局の調査によると、広島県内で来春卒業する大学生の内定率(10月末時点)は65.8%にとどまり、前年同期から6.0ポイント減った。減少幅はリーマン・ショックの影響を受けた2009年、平成不況の真っただ中の1999年に次ぐ大きさだった。

 観光や宿泊など、コロナ禍の打撃が特に大きい業種で求人が減っている。企業の採用意欲も低下し、ひろぎん経済研究所(広島市中区)が県内企業を対象に行った調査では「来春の新卒採用を減らす」と答えたのは29.7%、「採用しない」も13.2%に上った。

 【就活への影響、お知らせください】

 コロナ禍が就活に及ぼす影響を感じていますか。就職氷河期の再来も懸念されているようです。学生や保護者、大学関係者の皆さん、体験談やご意見をお待ちしています。匿名希望の場合も連絡先をお知らせください。 

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