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【コロナ禍と介護 水明園からのメッセージ】高齢者ケアを守るために<下> 皆で危機感を、切に願う

2020/12/25 19:37
機械が並ぶリハビリ室。使う人が代わるたび、職員が手で触れる場所に消毒液を吹き掛ける(三次市のデイサービスセンター水明園)

機械が並ぶリハビリ室。使う人が代わるたび、職員が手で触れる場所に消毒液を吹き掛ける(三次市のデイサービスセンター水明園)

 新型コロナウイルスは高齢者の命に関わる場合がある。だから介護現場は必死だ。思い付く限りの感染防止に取り組み、職員は外出も会食も自粛している。でも、この危機感を、一般の多くの人と共有できているのか疑問が残る。一人一人が感染しない、させないよう努めるべきだ。

 三次市のデイサービスセンター水明園には今、静かな時間が流れる。至る所に「お話は2メートル離れてお願いします」とのはり紙。耳が遠いため、会話を断念している利用者もいるようだ。

 以前はゲームをしたりカラオケをしたり、にぎやかな毎日だったという。「本来は楽しく過ごしてもらう場所。今は我慢するしかないですね」とベテランの男性職員はつぶやく。感染の怖さを知るだけに、徹底した対策を続けている。

 ▽随所に「密」対策

 水明園が再開にこぎ着けたのは、クラスター(感染者集団)発生から約1カ月後の5月中旬だった。最初の1週間は1日数組を風呂に入れるだけ。人数や時間を徐々に拡大し、今の形に落ち着いた。1日45人だったデイサービスの定員は30人に絞り、過ごしてもらう時間も1時間短縮した。

 他にも「密」を防ぐ工夫が随所に見られる。部屋は一つから二つに増やした。4、5人で囲んでいた机は2人用に替え、真ん中を飛沫(ひまつ)防止シートで仕切った。足腰を鍛える機械を備えたリハビリ室も少人数制にした。機械を使う人が代わるつど、職員が念入りに消毒する。

 それでも、現場の職員は「どんな対策をしても安心できない」と口々に言う。ウイルスはどこから入ってくるか分からない。また、入浴や食事、排せつなどのサービスは「密」が避けられない。「どんなに頑張っても感染する時はすると思う」。クラスター発生前も検温、消毒、換気などの対策は徹底していたという。

 ▽私生活でも自粛

 自らがウイルスを持ち込まないよう、職員はプライベートも犠牲にしてきた。ある職員は新婚旅行を見送った。車で温泉地に向かう予定だったが、感染拡大に考慮したという。別の職員は県外に暮らす娘と1年も会っていない。正月も帰省しないよう伝えたという。

 そうして必死にケアを続けるのは、サービスがないと生活できない人がいるからだ。独り暮らしの男性利用者(96)は「ここが一番ええ」と言う。「休業中はテレビの前に座っとるだけだった。ここはおいしいご飯が出るし、みんなと雑談できる。ありがたいです」

 広島県内では今、感染が急拡大し、同業者のクラスターも相次ぐ。水明園の現場をまとめる男性職員(42)は「どの施設も志を持ち、必死に対策していたはず。感染を防ぐには社会の一人一人に気を付けてもらうしかないんです」と強調する。

 男性の目には「Go To」が盛り上がり、人びとが旅行や外食に繰り出す様子が異様に映ったという。一方で「自らが介護現場にいなければ、同じように楽しんでいたかもしれない」とも。クラスターを体験した今、心から訴える。「若くて重症化しないから大丈夫。そうは思わないでほしい。周りの人を思いやり、一人一人が真剣に感染に気を付けてほしい」(文・田中美千子、写真・高橋洋史)

【コロナ禍と介護 水明園からのメッセージ】高齢者ケアを守るために
<上>誹謗中傷せず温かい目で

<中>共に闘うチームが必要

この記事の写真

  • 体操の時間。間隔を空けて座り、ビデオを見ながら静かに体を動かす(三次市のデイサービスセンター水明園)
  • 利用者も入念に手指の消毒を重ねる(三次市のデイサービスセンター水明園)

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