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北別府学さん「白血病に勝つ 強い気持ちで」 発病から「寛解」語る

2021/1/5 19:30
北別府学さん

北別府学さん

 広島東洋カープのエースとして活躍した野球解説者の北別府学さん(63)にとって、昨年は白血病との闘いの1年になった。治療は成功したものの、まだ後遺症がある。大きな病と対峙(たいじ)し、平穏に朝を迎えるありがたさを実感しているという。どんな闘病生活を送り、何を感じたのか。赤ヘルのレジェンドに聞いた。(聞き手・衣川圭、写真・山本誉)

  昨年1月に「成人T細胞白血病」を公表し、抗がん剤治療を始めた。

 プロ野球のスタートは2月のキャンプイン。数カ月で治るものじゃなく、野球解説の仕事もできなくなる。いろんな臆測が流れるより、はっきり公表した方がいいと思った。発表してから、多くの人の励ましの声が届いた。ありがたかった。こんなに大げさになるとは思わなかったけど。

 60歳まで大した病気もしたことがない。当時はほとんど体調も変わらず、血液の数値が悪くなっていると言われても「本当かな」という感じだった。そうして始まった抗がん剤治療。つらいと聞いていたが、しんどくはなかった。個人差はあるんだろうけど、髪が抜けるくらいで済んだ。

  抗がん剤治療のための入退院を繰り返した後、5月に次男の造血幹細胞を移植した。

 血液の型(HLA)の一致率が高い次男にドナーになってもらった。新型コロナウイルスがまん延した頃だった。ドナーが見つからなくて苦労している人もいるでしょう。そんな中でほぼ計画通り、抗がん剤治療から幹細胞移植へと進めたのはありがたかった。

 けど、この治療がきつかった。熱が上がるし、だるい。かゆみも出る。抗がん剤治療は自分には大したことがなかったので、移植も大丈夫かなと思っていたが大違い。2週間はご飯も食べられなかった。口内炎がひどくて、水分も取れない。味も分からなくなった。入院中の2カ月で体重が20キロくらい落ちた。

 同じ九州出身の担当の先生とは話が弾んだ。若いけど何でも言える存在だった。こっちもしんどいけれど、看護師さんたちもしんどいよ。夜中のトイレなどで呼び出すわけだから。ここまで来られたのはスタッフのおかげ。それと、本人にはなかなか言えないけれど、当たり前と思っていた女房の存在は大きかった。本当に感謝している。

  退院後に63歳の誕生日を迎えた。

 ほっとした。家ってこんなにいいところなんだと思った。病院でも良くしてもらったけれど、ずっと点滴を下げていて縛られている感じもあったからね。

 でも退院してしばらくは体調のいい日はあまりなかった。熱が出たり、湿疹が出たり…。拒絶反応は治る過程で出るというけど、息子の細胞が暴れているようでね。薬もごっそりある。喉の調子が悪いとのみ込むのもつらい。

 入院が長かったので筋肉が戻ってこない。脚を踏ん張ることができず、こける恐怖感がある。あれだけ走り回った人間が歩くのにも苦労している。びっくりするくらい衰えた。それに新型コロナウイルスは怖い。免疫の落ちている人間がとりつかれたら終わり。若い人たちも新型コロナを軽く見ないでほしい。

  12月には、白血病の細胞が検査で見られなくなる「寛解」に。だが、移植した細胞が患者の体を攻撃する状態は続く。

 これからの目標はまず、本来の元気な体に戻すこと。焦る必要もないだろうけど、キャンプに間に合うように体調を整えたい。(コーチをしている福山市の)英数学館高などの子どもたちに野球を教えたい。そしてドナー制度の充実のために何かができれば。骨髄バンクに登録していても、会社を休めずにドナーになれないこともある。移植で完治する人が増えることを願っている。

 完全復帰はもう少し先になりそう。病気になって気付いたのはね、前の日と体調が変わらずに、朝、すっと起きられるのは本当にありがたいことだということ。これからも自分は勝つぞという気持ちで病気と向き合っていきますよ。人間は諦めたら気力も体力もなくなってしまう。同じように大きな病気になった人には、生きるという気持ちを強く持ってほしいと伝えたい。

 きたべっぷ・まなぶ 57年、鹿児島県生まれ。宮崎・都城農高から76年にドラフト1位で広島東洋カープに入団。「精密機械」と呼ばれた制球力を武器に11年連続で2桁勝利をマークした。通算213勝を挙げ、94年に引退。12年に野球殿堂入り。

 ▽成人T細胞白血病

 ウイルスの感染で起こる。全国の感染者は約110万人。ほとんどが母乳を通じた母子感染で、100人中5人が発症するとされる。

 症状が出るのは60歳前後が多い。免疫力が落ち、感染症にかかりやすくなる。病気が進むといろんな臓器に障害が現れる。症状のないまま、健康診断で白血球の増殖が分かり、診断が付くことも少なくない。

 様子をみるタイプと、すぐに治療を始めないといけないタイプがある。治療は、抗がん剤を使う化学療法で病気の勢いを弱めた上で、骨髄移植などをするのが一般的だ。

 2011年度から妊婦健診で感染の有無を調べるようになった。授乳の工夫で乳児への感染を抑えられることも分かっている。 

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  • 抜群の制球力で200勝を達成した北別府さん

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