くらし

【この働き方大丈夫?】第8部 シニアの悲哀<2> 「65歳の壁」…仕事がない

2021/1/27 19:47
イラスト・大友勇人

イラスト・大友勇人

 ▽やる気・人柄、考慮されず

 近所のスーパーでパートの面接を受けたら、なんと「認知症テスト」をさせられた。「まだ66歳なのに。あぜんとしましたよ」と広島市の無職女性は悔しそうに振り返る。

 それが結構難しい。3種類のペーパーテストは、それぞれ100問近くもある。5桁以上の数字の計算もあれば、記憶力を問うものも。解くのに1時間かかった。担当者がストップウオッチを手に、解く速さと正確さをチェックする。

 どうも釈然としないのは、何のためのテストかということだ。高齢者を体よく門前払いするためで「はなから採用する気なんてないんでしょう」と女性。この店ではパートは70歳まで雇うと聞き、自分にもチャンスがあると期待したのに…。案の定、不採用で、1週間後に履歴書が送り返されてきた。

 65歳を過ぎると働き口が一気に減る。求人票には「年齢不問」とあっても、現実には「65歳の壁」が高く立ちはだかる。女性がパートに応募すると、どこも年齢を告げた瞬間に「うち65歳までなんで」とむげに電話を切られた。「1歳年を取っただけで、ここまで扱いが違うなんてねえ」。やる気や人柄で判断してもらえないのが悲しい。

 長年勤めた会社を昨年退職した。年金はそこそこあるが、ぼけたくないから元気なうちは働きたい。毎日、自宅マンションの階段を3往復し、買い物の道も遠回りして健康維持に努めているのに、相手にしてもらえない。

 コロナ禍の中で、仕事の奪い合いも激しくなっている。ようやく見つけた野菜加工のアルバイト先では、シングルマザーの中年女性から「私のシフト奪わないでよ」と敵視された。「とろい」「物覚えが悪い」といびられ、「年金暮らしの気楽な老人は働く必要ないでしょ」と嫌みを言われ…。ついに心が折れて辞めた。

 生活が苦しい彼女の事情も分かる。でも、働いて生きがいを持つことも疎んじられる。「年を取るって損ですね」

 広島市シニア応援センターで就労支援に当たる町田陽一さん(63)も「仕事のマッチングは難しい」と感じている。望みの職種や勤務形態、スキルなどの持ち味は人それぞれ。「雇う側も一人一人をもっとよく見てほしい。だけど実際にはまだまだ」と明かす。求人の年齢制限も原則禁止だが、いまだ根強く残る。

 広島県西部に暮らす男性(68)も半年ほど、聞こえのいい「年齢不問」の求人文句に振り回された。求人雑誌をめくり、電話をかけても「お断り」ばかり。めげそうになった時、ふと思い付いたことが、仕事を得るきっかけになった。

 純粋に高齢者を求めている雇い主がいるんじゃないか―。「それなら若い人たちとも競合しない、と考えたんです」

 早速、近くのハローワークへ。「65歳以上歓迎」をうたう求人がないか尋ねると「あった」。刷りだしてもらった紙には数十件が並んでいた。ただ、求める仕事ばかりじゃない。夜勤の警備は体にこたえる。送迎車の運転は短時間すぎる。週5日働いて日当5千円くらいという条件で探し、昨年末にようやく決まったのがマンション清掃のバイトだった。

 「一時はどうなるかと焦りましたよ。こっちは稼がないと生活が厳しいんだから」。妻は体が弱く、独身の娘も無職。年金は家賃や食費に消え、収入がないとやりくりに困る。昨夏まで製造業のバイトをしていたが、コロナ禍による業績不振を理由にあっさり解雇。先を考えると不安で仕方がなかった。

 「70歳も近い。次の職探しはもっと大変になると思う」。やっとつかんだ清掃の仕事を少しでも長く続けたい。気掛かりは、体を崩して休みがちになるだけで解雇されないか。「健康管理には気を付けないと。この年齢になったら一日一日が勝負です」(ラン暁雨、林淳一郎)

 ■オフィスワーク希望が1位

 シニアが希望する仕事ランキングの1位は男女ともに「オフィスワーク」。就職情報サービスのマイナビミドルシニア(東京)が2018年に実施したアンケート結果だ。重労働ではなく、働きやすいのが人気の理由。ただ、若い世代を含めて高倍率の職種で、採用をつかむのは難しい。

 男性では、上位に軽作業や清掃、警備が挙がる。経験をさほど求められず、採用されやすいという。女性では販売や接客が2位にランクイン。自宅近くのスーパーやコンビニなど、通いやすさも魅力のようだ。

 男女ともに2位以下の多くは人手不足の仕事。女性で4位の介護職もそう。しかし、実際に働いてみるとシニアには「きつい」と感じ、早々に退職してしまうケースも少なくない。

 【「壁」を感じた経験 お寄せください】

 仕事探しで「65歳の壁」を感じたことはありませんか。面接で理不尽な対応を受けたり、希望の職を諦めたり。皆さんの体験やご意見をお寄せください。年齢の「壁」を超えて働くためのアイデアもお待ちしています。匿名希望の場合も連絡先をお知らせください。

メール kurashi@chugoku-np.co.jp 「働き方」係
郵送 〒730―8677中国新聞くらし「働き方」係
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