• トップ >
  • くらし >
  • くらし >
  • 使うほど染まる、ご当地インク愛 文具店がゆかりの色 旅行気分、日常に彩り

くらし

使うほど染まる、ご当地インク愛 文具店がゆかりの色 旅行気分、日常に彩り

2021/2/6 18:47
ご当地インクで絵を描く瀬木さん。「いつの日かインクで知った土地を訪ねたい」=廿日市市(撮影・田中慎二)

ご当地インクで絵を描く瀬木さん。「いつの日かインクで知った土地を訪ねたい」=廿日市市(撮影・田中慎二)

 厳島神社の大鳥居の朱色や、福山市の鞆の浦に沈む夕焼けの色。全国各地の文具店が地元の名所や特産品から連想する色をインクにして売り出し、「ご当地インク」として人気を集めている。さまざまなニュアンスの色があって目を引く上、題材となっている土地や特産品などに思いをはせながら使う楽しさがあるようだ。

 138色のご当地インクが、廿日市市の会社員瀬木裕子さん(36)の自慢のコレクションだ。ガラスペンでイラストを描くのは至福の時間。山形県の「樹氷アメジスト」、静岡県の「駿河湾夏」などを手にして、その自然や土地についてインターネットで調べるのも面白いという。「新型コロナで遠出できない中、旅行気分です」

 色の種類が格段に多いのもうれしい。「育児日記を書くとき、雰囲気にぴったりの色があるので心がときめく」と話す。

 ご当地インクは各文具店が販売し、インターネットで2千円前後で購入できる。先駆けは、神戸市の文具販売会社「ナガサワ文具センター」が2007年に発売した「Kobe(こうべ) INK(インク)物語」だ。阪神大震災の後、同社の社員はがれきだらけの暗い街に、復興とともに色が次第に戻るのを目の当たりにし、「神戸らしい色の商品を作りたい」と思い付いた。

 当時は人気が下火だった万年筆。「字をきれいに書きやすい魅力を見直す機会になれば」との思いも込めてインクにした。

 朱塗りの神社や波止場など神戸市内各地の歴史的な建物や自然の風景を色にしたインクは全国的に話題になり、海外でも好評に。全国の文具店も後に続いて地元をテーマにしたインクを次々に作り、「自分たちの町に興味や誇りを持つきっかけにしてほしい」と売り出した。

 中国地方では、多山文具(広島市中区)が、広島県と香川県の計20色を出している。呉市の戦艦大和の船体の色を表現した「呉戦艦大和グレー」と、ウイスキーとつながりが深い竹原市の「タイムフォーウィスキー」の琥珀(こはく)色が特に人気だ。実物の色に極力近づけながらも、使う人が日常的に使いやすい色調に仕上げているという。

 多山拓郎社長(41)は「パソコンやスマホが主流になったからなおさら、文字を手書きする時は『せっかくだから』とインクを使う人が増えた」と話す。楽しみ方はさまざまという。色の名前や感想を書き込む「色見本帳」を作ったり、小瓶に移し替えて友達と交換したりするのもお勧めだ。

 倉敷市に本社がある文具店「うさぎや」は、福山市や岡山県の約40色を作っている。フレッシュな黄緑の「マスカット」や、シャープな藍色の「児島デニム」などがある。3月には「尾道千光寺の桜」などを発売予定だ。

 福山南店(福山市)で筆記具を担当する峠(たお)あかねさん(30)は、これからご当地インクを集めたい人に「10、15ミリリットル入りのミニサイズから始めては」と助言する。退色するため2年ほどで使い切った方がいいからだ。「コロナ禍の中で会えない人に古里のインクで手紙を書いてみてはどうですか」と呼び掛けている。(治徳貴子) 

この記事の写真

  • ご当地インクで瀬木さんが書いた育児日記など
  • 瀬木さんが集めたご当地インクの一部。「全国のインク仲間と交換して増やしています」

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

くらしの最新記事
一覧