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【「支配」が怖い】<上>当事者の経験から 身近な人だから、逃げられず

2021/3/21 19:22
グラフィック・末永朋子

グラフィック・末永朋子

 福岡県で5歳の男児が餓死した事件が今月、明らかになった。背景には、男児の母親に対する知人女性の経済・精神的な「支配」があったとされる。特異なケースかもしれないが、人の言いなりになってしまう関係に思い当たることはないだろうか。無料通信アプリLINE(ライン)で中国地方の読者に尋ねると、知人や先輩の支配に悩み「恐怖すら感じた」という声も聞かれた。(林淳一郎)

 ▽信頼関係を優先 着信におびえた

 「今思うと、私は支配されていました」。広島県内の40代女性は、かつて職場の先輩女性と10年以上も続いた関係をため息交じりに振り返る。

 出会った当初は、仕事上の「よき先輩」。プライベートでも連れだって旅行するほど親密だった。ところが、恋愛や食生活も細かく指示されるようになり、やがて健康食品の販売に誘い込まれた。販売の成績が悪いと、叱り飛ばされる。心の隅で「マルチ商法じゃないの」と思っても、信頼関係を優先するあまり疑いを口にすることすらためらったという。

 先輩からの携帯電話の着信におびえ、声を聞くだけで涙がこぼれた。つらくて電話に出られなくなり、母親に打ち明けたのが距離を空けるきっかけに。話すことで少し冷静になり「やはりおかしい」と出来事を客観視することができた。「後輩という引け目があったんだと思う。利用されていることすら分からなくなっていたことに気付きました」。縁が切れたのは「ここ数年のこと」と話す。

 ▽仕切るママ友 行動を縛るように

 広島県西部に暮らす50代女性は、子どもが小学生の頃の「ママ友」関係を「私の黒歴史」とこぼす。10人ほどのグループを近所の女性が仕切り、最初は気さくだったのに「グループにいれば大丈夫だから」「あの人と仲良くしちゃだめ」と縛り付けてきた。

 朝早くから電話をかけてきて、夫や気に入らない人の悪口が何時間も続く。電話に出ないと自宅にも押し掛けてきた。「逃げたくても、怖くてブレーキがかかるんです」。夜になるとストレスで胃がきりきり痛んだ。

 耐えかねて仕事を始めた途端、自分が新たな悪口のターゲットに。しかし、何を言われてもいいと開き直ってみると、嫌な相手から離れた方が楽だった。仕事で新たな人間関係にも恵まれた。「覚悟して抜け出す勇気を振り絞らないと、私はつぶれていました」と打ち明ける。

 このほかにも、趣味サークルの仲間の支配的な態度に苦悩した経験や、近隣住民に都合のいいように振り回されたというケースも寄せられた。

 広島県東部の60代女性は夫を亡くして間もなく、家族ぐるみで親しくしていた近所の女性の振る舞いが激変したという。名前ではなく「あんた」呼ばわり。夫を失った弱みに付け入るように、無断で敷地に車を止め、自宅に上がり込んできて気に入った物を持ち帰ることが続いた。

 嫌だと思いつつ、仲の良かった頃もあるだけになかなか拒めない。一方で、何もかも乗っ取られそうな恐怖を感じて、おばに相談すると「あなたも悪い。離れなさい」と一喝された。それでも「親切にしているだけ」と言い返してしまう自分に違和感を覚え、ようやく「おかしな関係」を自覚できたという。

 相手と距離を置くようになって思うのは、あのまま関係が続いていたら自分はどうなっていたかということ。「どこまでエスカレートするのか分からない。福岡の事件も決して人ごとではないと思うんです」

 <福岡男児餓死事件>5歳の男児に十分な食事を与えず餓死させたとして今月2日、福岡県篠栗町の男児の母親と知人の女性が保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された。母親は知人女性から生活面で支配されていたとみられている。生活保護費などを搾取され、母親家族は困窮。だまし取られた総額は1千万円を超す可能性もある。

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