くらし
コロナ拡大、基本技で防ぐ 広島の感染管理認定看護師・篠原久恵さんに聞く
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、感染管理認定看護師の活動の場が広がっている。総合病院で経験豊富な広島市南区の篠原久恵さん(46)は、クラスター(感染者集団)の発生した札幌市の病院に昨年12月、全国知事会から派遣された。過酷な環境で自ら感染する恐怖を感じながら、収束に向けた対応に当たった。企業や家庭でも役立ててほしいというポイントを紹介する。(衣川圭)
【ポイント1】症状があれば出勤しない
派遣先で最初に陽性が分かったのは、療養病棟のスタッフだった。夜は飲食店で働き、かぜの症状があったがそのまま勤務を続けていた。口や鼻を覆わない「あごマスク」で入浴介助していたという。最初の接触者検査で、陽性者は20人余りに上った。職員は症状があれば休む。管理者はきちんと休ませる。そこを徹底しないとクラスターは、いつ起きてもおかしくない。
【ポイント2】防護具は意味を理解して着ける
防護具の間違った使い方をよく見かけた。例えば、防護衣の上からのポシェット掛け。防護衣は汚染区域で脱いでも、ウイルスをポシェットとともに安全なエリアに持ち出しかねない。患者のケアをした手袋を着けたまま会議に出る人もいた。スーパーなどでも手袋着用を見かけるが、もし手袋が汚染されていれば、他に広げるかもしれないことは知ってほしい。
不安だからと言って、過剰になるのも危険だ。防護衣を二重に着る人もいたが、限られた資源の無駄遣いになり、作業の効率も下がる。一方、感染性のあるごみを入れる容器に手で触れた後、手指消毒をしない人もいた。ごみ容器は、できれば足踏みで開閉するものを選びたい。
【ポイント3】「いつでもマスク」が基本。口の中に入れるものは要注意
スタッフの動きで気になったのは、休憩室からナースステーションへコーヒーを飲みながらの移動。同僚と擦れ違えば、マスクを外したままの会話になることもある。更衣室もマスクを外しておしゃべりをしがちなので注意が必要だ。
私も以前は、かぜの症状があるなど、限られた場面でしかマスクは要らないと言ってきた。でも常識は変わった。新型コロナは発症前に感染力を持つ。特別な事情がなければ、いつでもマスクを着けるのが基本だ。
病院や高齢者施設でも、歯ブラシがくっつき合うように保管されたり、持ち運んだりしているケースがある。感染が一気に広がってもおかしくない。
▽仕事の重圧・偏見…夜も眠れず 派遣された北海道の病院
病院などでクラスターが頻発していた北海道から、全国知事会に看護師の派遣要請があったのは昨年11月下旬。篠原さんは広島県看護協会を通じて打診を受け、12月6日に札幌市入りした。約3週間働いたのは約100床の病院だった。
療養病棟の患者の9割が感染した。派遣期間中に10人以上が次々と亡くなった。遺体を置く場所もなく、遺体袋に入った患者がベッドにそのまま横たわっている。患者のケアのために、病室へ1人で入るのは怖かったという。
スタッフも辞めて減っていく過酷な職場だった。もし感染したら「広島から来た感染管理のプロがコロナになった」と言われる…。プレッシャーがのしかかり、夜は眠れなかった。偏見にも直面した。クラスターの病院で働いていると分かると、タクシーを呼んでも電話に出てもらえなかった。
感染対策の基本を徹底し続け、広島に帰るときは、あと一息で収束するというとこまでこぎ着けた。日頃から地域で連携し、対策の質を高めていくことが大切だと確信している。
しのはら・ひさえ 07年に感染管理認定看護師の資格を取得。呉医療センター(呉市)を経て、01年から20年10月まで安芸市民病院(広島市安芸区)に勤務。新型コロナウイルスの療養ホテルでも働いた。ことし4月、南区翆に訪問看護ステーション「レジハピ」を開く。
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