• トップ >
  • くらし >
  • くらし >
  • がん患者、1人じゃないよ 竹原の市民グループ代表を務めた大石さんに聞く

くらし

がん患者、1人じゃないよ 竹原の市民グループ代表を務めた大石さんに聞く

2021/4/18 19:32
「多くの患者さんや家族とつながって、私たちも育てられたように思います」と振り返る大石さん(竹原市の自宅)

「多くの患者さんや家族とつながって、私たちも育てられたように思います」と振り返る大石さん(竹原市の自宅)

 ▽20年近い活動に幕 周囲は「大きな愛と少しのおせっかい」を

 がん患者たちをサポートしてきた竹原市の市民グループ「広島・ホスピスケアをすすめる会竹原支部」が、3月末で20年近い活動に幕を下ろした。患者や家族の交流サロンを拠点に、自宅でのみとりまでボランティアで支える取り組みは「竹原モデル」として全国から注目された。代表を務めた大石睦子さん(76)に、がん患者にどんな支えが必要なのか、あらためて聞いた。(林淳一郎)

 ―どうして支部を閉じることになったのですか。

 すべて新型コロナウイルスのせいにするのは嫌なんだけど、やはり影響が大きくて。週1回のサロン「つむぎの路(みち)」も開きにくくなりました。がん患者にとって感染症は大敵だから。がんについて学ぶ市民講座の開催も難しい。私を含めて6人いるボランティアが老いたのも理由です。

 ―つむぎの路はどんな場所だったのでしょう。

 ある患者さんが「実家みたいだ」って言っていました。市内の2DKマンションに集まって半日ゆったり過ごします。台所からトントンと包丁の音がして、お鍋がしゅんしゅん沸いて。くつろげる場所に帰ってくる感じだったのでしょう。

 何げないことを話すうち、互いに癒やし、癒やされる。きのう見たテレビ番組とか、春ならツクシを摘んだとか。でも先行きの不安や悩みは、別の部屋で私たちボランティアが聞くんです。みんなでランチを囲み、ティータイムも楽しんで。誰も帰りたがらないのに困りました。

 つむぎの路の利用者は延べ3千人を超えました。こんなにも多くの出会いがあったことにあらためて感謝しています。

 ―「奇跡」にも出合ったそうですね。

 ある男性は家族に抱えられて、つむぎの路に来ていました。ところが、みんなと話してランチもぺろりと食べ、自力で歩いて帰っていく。自分を受け止めてもらい、がんと前向きに付き合う気持ちになるんでしょう。家族もですよ。闘病の末、旅立った母親に「よく頑張った」と泣き泣き拍手を送る高校生もいました。

 ただ、最初は私たちを拒む人もいます。子宮がんの若い女性はそうでした。家族は助けが欲しくても、本人は死の不安を受け入れられない。それでも痛む体をさすり、ぎゅっと抱きしめて。訪ねるうちに信頼関係ができていきました。

 ―支える上で大切にしていたことはありますか。

 がんになっても1人で生きているわけじゃない。そう感じてもらえるかどうか、でしょうか。

 がんは怖い病気です。どんなに新しい治療ができても死を想像してしまう。覚悟が要るし、家族も巻き込みますから。でも、闘って生き抜くのは患者さん本人です。孤立せず、いかに自分を律するか。そのためのサポートを私たちが買って出る。医師や看護師だけでなく、地域のボランティアも関わることで患者や家族を支える小さな社会ができていく。それは、とても心強いことだと思います。

 ―大石さん自身、がんの体験があるそうですね。

 47歳の時に乳がんを患ったんです。福祉施設で働いていて、末っ子はまだ10歳。子どもたちを残して死ねない。怖くて、毎日泣きわめきました。術後の痛みにも苦しみました。

 そんなとき、主治医が休日なのに「病院に来なさい」と。包み隠さず話すうちに体と心の苦痛が和らいでいくのを実感しました。支えてくれる医師や家族がいる。そこに地域も加わったら、どんなに大きな力になるか。

 ―地域が加わるとは、どういうことでしょう。

 がん患者だからといって、病室に隔離されるのはおかしいでしょう。患者さんが住み慣れた自宅で過ごせるよう、ボランティアによる訪問ケアにも力を入れてきました。ベッドサイドで語り合い、手を握ってハグもして。その間、家族には買い物などに行ってもらいます。死をしょっている患者をみる家族もつらいから。少し離れることも大切なんです。

 5年前にはNPO法人「訪問看護ステーションうさぎ」も立ち上げました。地元の竹原を、最期まで地域で過ごせる「ホスピスタウン」にしたかったんです。

 ―今後、どんなサポートが広がっていけばいいと思いますか。

 ホスピスマインドを医療関係者や多くの人に持ってほしい。それは温かい心です。電話相談の対応も、患者や家族がどれだけ勇気を出してかけてくるか。その思いをくんで話を聞く。訪問看護であれば、ほんの5分でも帰りがけに会話を交わすだけで喜びを感じてもらえるはずです。

 私たちも、たいそうなことをしてきたと思っていません。心掛けたのは、大きな愛とちょっとのおせっかい。大根を煮て患者や家族にお裾分けするのもボランティアです。まだ表現できていなくても、そうした気持ちのある人はいるのではないでしょうか。

 マインドをつないでくれる人が少しでも増えたら、これほどうれしいことはありません。 

この記事の写真

  • つむぎの路に集うがん患者たち。手作りのランチが並び、笑顔が広がる(2011年)

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

くらしの最新記事
一覧