くらし

家庭内感染防ぐ、コロナ自宅療養 広島・40代女性の体験から

2021/5/11 19:58
グラフィック・大友勇人

グラフィック・大友勇人

 新型コロナウイルス感染の「第4波」が押し寄せる中で増えている自宅療養。今月に入り、広島県内では300人を超えた。避けたいのが同居家族への家庭内感染だ。自宅でどんな対策が必要なのか。体験者の声を基に考える。(田中美千子)

 【広島市の40代女性の場合】

 昨年12月上旬、37度台の熱が出て、PCR検査で感染が判明した。糖尿病を患う夫と2人暮らし。夫に感染しないよう、女性は入院かホテル療養を望んだが、一向に空きが出ず、自宅療養は13日間続いた。幸い、夫に症状は出ず、PCR検査の結果も陰性だった。

 ▽隔離生活

 突然に始まった自宅での療養生活。どうすれば夫にうつさずに済むのか―。途方に暮れた女性は、インターネットの情報を片っ端から調べた。同じように自宅待機を強いられた感染者の体験談を見つけ、まずは夫から自らを隔離するため、部屋を分けることにした。

 トイレと入浴以外、自身は寝室を出ないと決めた。夫はリビングに布団を敷いて寝てくれた。2人のやりとりにはもっぱら、スマートフォンのLINE(ライン)を使った。

 まず直面したのが食事の問題だった。夫が陰性と分かるまでは、夫婦ともに外出できない。そこで、友人に電子決済サービス「ペイペイ」で送金し、玄関前に弁当を届けてもらった。夫は陰性が分かると、保健所から濃厚接触者と告げられた。マスクを着ければ、簡単な買い物には出られるように。家事を一手に担ってくれた。

 ただ夫は職場からテレワークを告げられ、食卓を机代わりに仕事をこなすことになった。料理中に仕事の電話を取り損なって困ったことも。夫は仕事が立て込むと、大鍋にカレーを作り置きしてしのいだ。女性は夫に頼み、水に加え、バナナなど手軽な食品も用意してもらうようにした。

 女性は、自室を出る時も細心の注意を払った。マスクとビニール製の手袋を着用。トイレや洗面所を使うたび、キッチンペーパーとアルコール消毒液で丹念に拭いた。タオルの共用も避けた。入浴は夫の後と決め、出る前はやはり掃除を徹底した。自分が出したごみは、袋を2重にした上で捨てるようにした。

 ▽心の負担

 療養中は何かと気をもむことが多かったという。病院から処方された熱冷ましを服用。風邪のような症状は、やがて治まった。が、保健所からは電話で「病院かホテルに入ってもらうが、まだ調整中」と繰り返される毎日が続いた。

 陽性判明の5日後にようやく、保健所の送迎車で医療施設に向かい、治療の優先順位を決める「トリアージ」を受けた。結果は「軽症」。再び家に帰された。濃厚接触者は感染者に接触した日から14日間、外出自粛を求められる。女性は「私が家にいる以上、夫はいつまでも会社に出られない。そう思うだけでストレスだった」と振り返る。

 「もし急変したら…」。そんな不安が付きまとったという。自宅で待機中に感染者が亡くなる事案が全国で相次いだ。保健所に相談すると、万一のときは救急車を呼ぶよう指示された。

 部屋にテレビはない。折り畳み式のテーブルとタブレット端末を持ち込んだ。インターネットラジオを聞いたり、本を読んだりして、時間がたつのを待ったという。「毎日、情報収集し、自宅療養を乗り切った人の体験談を心の支えにした。『うちも大丈夫』と言い聞かせていました」

 ▽各種手続き

 女性は入院一時金がもらえる生命保険に加入していた。肝心の入院が決まらないため、保険会社に問い合わせると、市から発行される就業制限の証明書があればいいという。ところが、いくら待っても書類が届かない。結局、自費で6千円を支払い、クリニックから診断書を出してもらい、代用した。市から証明書が届いたのは、2カ月後だったという。市は「感染者が立て込むと、どうしても時間がかかる。平常時は速やかに出すように心掛けている」と説明している。 

 ◇ケアする人決め、換気こまめに 広島県医師会・新型コロナ対策担当理事 西野医師に聞く

 広島県医師会の新型コロナ対策担当理事で、広島市民病院の西野繁樹・救命救急センター長に、自宅療養する際のポイントを聞いた。
(ここまで 1678文字/記事全文 2173文字)

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