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コロナワクチン、子どもの接種どう考える? 広島大病院小児科の岡田賢教授に聞く

2021/6/19 19:18

 新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、12歳以上の子どもにも接種券が届き始めた。「第4波」で感染が増えた中高生たちへの接種に期待は高まる。一方、集団接種の方針を示した自治体には「子どもを危険にさらす」など抗議が相次ぎ、再検討を迫られた。子どもの接種とどう向き合えばいいのか。広島大病院小児科の岡田賢教授(47)に聞いた。(衣川圭)

 ―新型コロナワクチンの子どもへの効果を教えてください。

 国内で12〜15歳にも接種できるファイザー社製のワクチンの臨床試験では、有効率100%という結果でした。偽薬を接種した978人で16人が発症しましたが、ワクチンを2回接種した1005人では発症はゼロでした。

 あくまでも限られた人数の試験で、接種した子どもが絶対に感染しないとは言い切れません。しかし、有効率50%前後とされるインフルエンザワクチンと比べると、発症を抑える効果は非常に高いと言えます。

 ―子どもは副反応が大きくなりませんか。

 子どもだから、ほかの世代に比べて特別に危険というわけではありません。ファイザー社の臨床試験では、12〜15歳の安全性は「16〜25歳と同様」と評価されました。医療従事者たちの接種で報告されているように、主な副反応は、接種した場所の痛み、だるさ、頭痛、発熱などです。

 2回目の接種後に12〜15歳が38度以上の熱が出る割合は19・6%。16〜55歳の15・8%、56歳以上の10・9%より高いです。若い人ほど体外からの「異物」に対抗する免疫の反応がしっかりしているからでしょう。接種後、若い男性に心筋炎(100万人に1人程度)が起きたとの報告もありますが、ほとんどが治療で軽快しています。

 ―子どもは感染しても症状は軽いと言われます。ワクチンで熱が出る方がしんどいのではないですか。

 日本小児科学会の会員が登録した20歳未満の感染者2100人(6月17日現在)をみると、45%が無症状で、87%は無治療で回復しています。国内ではこれまで20歳未満の死亡例はありません。確かに、子どもの症状は比較的軽いケースが多く、発熱などの副反応で苦しむ方が本人にとってはマイナスが大きいようにみえます。

 ただ、感染の数週間後に、心臓などの複数の臓器に炎症が起きる小児特有の病気「多系統炎症性症候群(MIS―C)」が国内でも確認されています。こうした重い症状を防ぐのもワクチンの大きな目的です。これまでは重症化する子どもは少なかったですが、変異株の影響で状況が変わることもあり得ます。

 ―子どもはワクチン接種をするべきですか。

 接種はそもそも強制されるものではありません。反対に、接種しないよう誰かに強いられるものでもありません。その上で、リスクを比較すると、現在、健康な子どもの接種は急がないといけない状況ではないでしょう。

 今、一番に考えてほしいのは、同居する親たちの接種です。子どもの感染のほとんどが大人からで、7割は家庭内で起きています。家庭に大人がウイルスを持ち込まなければ、子どもの感染を大きく減らせます。

 子どもで接種してほしいのは、持病があって重症化の恐れのある場合です。ぜひ、主治医と相談してください。大学病院では、免疫の病気のある子どもの保護者からよく相談を受けますが、接種よりも感染する方がリスクが高いので接種を勧めています。ほかにも万全の状態で受験や試合に臨むために、家族で話し合って接種するという考え方もあるでしょう。

 ワクチンに含まれるmRNAについて心配する声もありますが、厚生労働省は、mRNAは短期間で分解され、人の遺伝情報のDNAに組み込まれるものではないと否定しています。

 ―世界保健機関(WHO)は、先進国の子どもよりも先に、発展途上国にワクチンを平等に分配するべきだと訴えています。

 途上国では、医療従事者や重症化リスクの高い高齢者への接種も進んでいない。世界に目配りする立場のWHOの考え方はよく理解できます。ワクチン格差を解消する努力は必要です。

 一方で、希望している国内の人にできるだけ早く接種してあげたいというのも正直な気持ちです。接種は任意ですが、新型コロナの感染が広がりにくい社会にするには、できるだけ多くの人が接種することが重要です。7割くらいの人が受ければ、流行が抑えられるとされています。ワクチンの成分に対する過敏症などがあり、接種できない人たちも守られるのです。

 ―接種する場合は、集団と個別のどちらを選ぶといいでしょうか。

 かかりつけの医療機関などでの個別接種を基本に考えましょう。医師に疑問や不安を伝えて、説明を聞いても解消されないなら、接種をやめる選択肢もあります。集団接種の場合は、健康上の理由や個人の意思で希望しない子どもや保護者が差別されないよう、配慮が求められます。

 日本小児科学会や日本小児科医会は、個別接種が望ましいとする考えを示しています。

 ―ワクチンとはどう向き合えばいいですか。

 まず、どんな医療でも100%の安全はなく、ワクチンに関しても「ゼロリスク」はないことを知っておいてください。また、近くにあるリスクは大きく見えやすいことも知ってほしい。ワクチンが身近になったために、副反応のリスクが感染のリスクより大きく見えることもあるかもしれません。

 インターネット上などには科学的ではない情報もあふれています。かつて、はしかとおたふくかぜ、風しんを予防するMMRワクチンが自閉症を引き起こすという論文が発表されました。既に否定され、取り下げられているにもかかわらず、この論文を基にした論調も見受けられます。

 多くの医師や科学者が精査して発信している日本小児科学会や厚生労働省などの情報を参考にしてください。その上で、接種する場合としない場合のリスクと利益をてんびんにかけて、一人一人が判断するしかありません。そして、その判断は尊重されるべきです。 

 おかだ・さとし 73年、呉市生まれ。99年、徳島大医学部卒。広島大病院小児科勤務などを経て、20年から現職。新型コロナウイルス感染症の重症化に関する国際研究にも参加している。 

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