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【広島土砂災害を追う 第3部 開発の末に】<2>山際の家 価格手頃、規制前に拡大

2015/1/22 10:40

八木ケ丘団地の坪単価などが記載された分譲価格表。左半分は分譲計画図に契約済の○印があり、売れ行きが好調だったことがうかがえる

 土砂災害が襲った広島市の現場の多くは山際の住宅地だった。10人が亡くなった安佐南区八木4丁目の八木ケ丘団地。1965年に土地を購入した山本強さん(69)は「郊外でどんどん土地が造成され、早く買わないと自分たちの土地がなくなると思った」と当時を思い出す。

 ▽豪雨時の危険性認識

 購入を決めたのは見晴らしの良さや手の届く価格だった。山本さんが保管する当時の分譲価格表によると、1坪5500〜9500円。山側の土地になるほど価格は抑えられた。山本さんは50坪の土地を30万円(当時)で買った。

 山際が宅地へと変わっていく中、国は無秩序な開発を防ごうと、68年に規制に乗り出す。

 73年に広島市と合併した今の緑井、八木地区を含む旧佐東町が、66年の測量データを基に、山際と宅地の境に赤い線を引いた地図が市に残っている。線は、下水道などインフラを整え積極的に市街化を進める「市街化区域」と、農地確保などのため開発を制限する「市街化調整区域」の区分けを指す。

 ▽行政が造成追認

 両区域を設けて線引きする新しい都市計画法により、緑井、八木地区の市街化区域は、広島県都市計画地方審議会に諮られ、71年(昭和46年)に決定した。

 地図を見ると、線引きの大半は、すでに家が建つ斜面と山の境界をなぞっている。「少なくとも昭和40年代前半には、山際に住宅が集まっていた」と市都市計画課。事実上、斜面の宅地化を制度が追認した形だ。土砂災害の被害を受けやすい場所にその後、宅地開発が進んでいった。

 平地の少ない広島市。経済発展や人口増加に伴い、当時の宅地開発は、中心部の平地から郊外の斜面へと移っていった。「あと1年線引きが遅ければ、もっと山裾の開発が進んでいたのではないか」。同課は推し量る。

 山本さんは今、こう振り返る。「大雨が降り団地内に巨石が落ちてきたことがあった。今回の土石流で被害を受けた場所だった」。98年、八木ケ丘町内会が団地創立30周年の記念誌にまとめた住民の座談会でも、「水が山からドーッと出よったんです。山から滝ですよ」「雨の強いときにはね、石の転がる音がゴロゴロ、ゴロゴロ、凄(すご)い音がするんじゃけえ」と土地について語り合った様子が記録されている。災害の予兆はあった。

 ▽川の氾濫も警戒

 鉄道や幹線道路が近く、魅力的なエリアの八木地区。その南東には、氾濫を繰り返していた太田川がある。「山側は低地より安全だと思っていたのに」。そんな考えが住民を山際の宅地へと誘い、そして、土石流が猛威を振るった。(久保田剛)


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