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<4>地図は語る 要救助者をDB化 防災の盲点 洗い出す

2013/3/9 12:39
消火栓の位置を示した地図を広げ、出火時の対策を話し合う寺山事務局長(右端)たち

消火栓の位置を示した地図を広げ、出火時の対策を話し合う寺山事務局長(右端)たち

 新潟市西区五十嵐地区は、100近いミニ団地がパッチワークのように連なる。道路は狭く、行き止まりも目立つ。

 人口は約1万5千人。災害や火災時、助けがいると思われる住民の個人情報が、データベース(DB)として整理されている。

1年かけ調査

 70歳以上や寝たきりのお年寄り、障害のある人たち約2500人について、住所、名前、家族構成、緊急連絡先などのデータを集めた。消火栓や防犯灯の位置、坂道の傾斜などのデータと組み合わせれば、防災地図が簡単にできる。

 「救助の優先順位が分かり、具体的な避難計画も作ることができる」。DBを作った五十嵐コミュニティ協議会の寺山和雄事務局長(75)は利点を挙げる。

 調査は簡単ではなく、1年を要した。転入してきた住民が自治会に加入する際に書いた世帯票から、名前や年齢などの基礎的なデータを拾った。

 詐欺事件などが横行する昨今、個人情報を委ねることを不安がる人も多い。事実、広島県内では自治会役員や民生委員すら世帯情報の入手が難しい。県地域福祉課の小川博司課長(55)は「警察や消防以外は地域の全世帯をカバーできていないのでは」とみる。

 五十嵐地区では、各自治会の世話役が、情報提供を丁寧に呼び掛けた。DBを安心・安全以外の目的では使用しないことも誓った。

 集めた情報は協議会が所有するパソコンに入力し、地区中心部にある市の施設「五十嵐コミュニティハウス」で保管する。閲覧するためのパスワードは、寺山事務局長しか知らない。

 それでも納得が得られない世帯には、おおまかな年齢や障害の有無など、災害時の支援を判別するのに必要な情報に絞って聞いた。協議会の伊藤和美会長(63)は「説明を尽くして信頼関係を築くしか方法はない。最低限でも情報さえあれば対策は打てる」と話す。

放水届かない

 道幅や家屋の接近度、空き家…。DBに新たな情報を足して充実させる。2月下旬には五十嵐コミュニティハウスで、寺山事務局長たち9人が印刷した地図を見詰めていた。

 入り組んだ街並み。地図上で消火栓からの放水範囲を確かめると、水が届かないエリアがいくつもあった。「道も狭いし、大型の消防車は入って来られねえんじゃねえか」。今後、市消防局と初期消火や避難の対策をたてる必要がある。

 分かっているようで分かっていない地元の地理。知っているようで知らない「向こう三軒両隣」の事情。DBを基に描いた地図は、団地のいまをより克明に語ってくれている。

▽クリック 五十嵐地区
 JR新潟駅から南西約9キロにある住宅地。もともとは松林やスイカ畑の広がる砂丘地帯で、1965年から宅地開発が本格化した。昨年3月末現在で約6500世帯が暮らす。高齢化率は25・7%。地区内に新潟大の学生向けアパートが多くあって比率を押し下げているが、実態はより深刻とみられる。

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