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【梅雨を前に 広島土砂災害の50人】<下>要支援者 避難プラン見直し急務

2015/5/23 10:46

「早めに避難するしかない」。災害について振り返る陰山さん夫妻

 ▽高齢者・障害者 広がる不安

 「ひどい雨の予報が出ると怖いので避難したい。でも、普通の人のようにはいかないから」。土砂災害で4人が亡くなった広島市安佐南区の阿武の里団地。難病のため体が不自由な陰山美保子さん(66)が夫の哲章さん(71)に目を向けた。

 美保子さんは、歩行に補助器具が必要。昨年の災害では自宅に土砂や巨木が押し寄せ、庭の植木がかろうじて食い止めた。その分、雨の恐怖は募る。「突発的な雨で避難できなければ、女房を担いで2階に上がる」と哲章さん。豪雨が予測できるときには、福祉施設から車で迎えに来てもらうという。

 ▽名簿作り義務化

 多くの高齢者や障害者が犠牲となった東日本大震災を教訓に、国は2013年に災害対策基本法を改正。自力での避難が難しい要支援者の名簿作成を市町村に義務付けた。さらに、一人一人を誰がどこに避難させるかをまとめた支援プランの作成を呼び掛けている。

 広島市も民生委員の協力を得て、高齢者や障害者、難病患者4043人(14年3月末現在)の名簿を作成。原則として1人につき、避難を支援する近所の人たち2人以上を充てる。昨年の災害で避難指示・勧告が出た安佐南、安佐北両区の地域の要支援者は計438人。全員に支援プランがあった。

 しかし、プラン通りの支援は困難を極めた。土砂や巨岩で道はふさがれ、支援者も自分の身を守ることで精いっぱいだったケースもある。安佐南区で民生委員を務める会社社長正木文治さん(52)は「災害が発生してから、素人が支援するのは無理。発生前から避難できるよう制度を根本から見直すべきだ」と語気を強める。

 特に精神や知的などの障害が重い人は深刻だ。近所との交流が進まず、支援者を決めることが容易ではない。避難指示や勧告への理解度が低かったり、健常者と同じ避難所では過ごしにくさを感じる場合もある。

 広島県内31の障害者団体でつくる広島障害フォーラム(同区)の松田泰事務局長(66)は「障害者団体の代表者を加えた協議会をつくるなど、災害時の支援に向けた連携を急ぐべきだ」と指摘する。

 ▽未掲載ケースも

 一方、市の規定では健常者と同居の場合などは原則、名簿の対象から外れる。「支援が必要なのに掲載されない障害者も多い」との指摘もある。同区で体が不自由だった男性(59)が健常者の妻(54)と一緒に土石流に襲われて亡くなった。名簿には記載されていなかった。

 市は要支援者名簿の対象要件の見直しを進めている。併せて支援する人を確保する方策についても検討を重ねる。健康福祉企画課は「障害者の意見を機会があるごとに聞き、より実効性のあるものにしたい」とする。

 「避難弱者」をどう支援するか。発生から9カ月を経た今も、災害を教訓にした具体的な道筋は見えてこない。


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