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ノーベル化学賞に吉野氏 リチウムイオン電池開発、情報化社会支える

2019/10/9

ノーベル化学賞の受賞が決まり、笑顔で記者会見する吉野・旭化成名誉フェロー(9日午後7時49分、東京都千代田区)

 【ストックホルム共同】スウェーデンの王立科学アカデミーは9日、2019年のノーベル化学賞を旭化成名誉フェローで名城大教授の吉野彰氏(71)ら3氏に授与すると発表した。スマートフォンなどに広く使われるリチウムイオン電池を開発し、現在の情報化社会を支えるほか地球温暖化の解決にもつながる成果として高く評価された。同アカデミーは「私たちの生活に革命をもたらし、人類に偉大な貢献をした」とたたえた。

 日本人のノーベル賞受賞は27人目で、昨年、医学生理学賞に選ばれた本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授(77)に続く快挙。化学賞は10年の鈴木章北海道大名誉教授(89)と根岸英一米パデュー大名誉特別教授(84)以来で8人目。

 吉野氏は東京都内で記者会見し「受賞は非常にうれしい。(リチウムイオン電池を搭載した)電気自動車が普及して巨大な蓄電システムができれば、太陽光発電なども普及し環境問題の解決に貢献できる」と述べた。

 共同受賞は、米テキサス大オースティン校のジョン・グッドイナフ教授(97)と、ニューヨーク州立大のマイケル・スタンリー・ウィッティンガム特別教授(77)。グッドイナフ氏はノーベル各賞を通じ最高齢受賞。乾電池など使い捨ての1次電池と異なり、リチウムイオン電池は何度も充電して使える蓄電池で、2次電池とも呼ばれる。正極と負極の間をリチウムイオンが移動して充電や放電をする。

 ウィッティンガム氏はリチウムを利用する電池の開発に早い段階から着手。実用化には至らなかったが、グッドイナフ氏がコバルト酸リチウムを正極に使い大きな電圧を得ることに成功した。吉野氏がこの正極をベースに、特殊な炭素材料を負極として組み合わせ電池の基本構成を確立した。

 ソニーが1991年に初めて実用化し、当時主流だった2次電池を大きく超える性能を実現した。小型軽量で高性能のためスマホやノートパソコンなどモバイル機器の普及に貢献。再生可能エネルギーの出力変動を補うため風力や太陽光発電の拡大にも役立ち、用途は多岐にわたる。

 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金900万クローナ(約9700万円)を3氏で等分する。

 よしの・あきら 1948年1月30日、大阪府吹田市生まれ。70年京都大工学部石油化学科卒、72年京大大学院工学研究科を修了し、旭化成工業(現旭化成)に入社。電池材料事業開発室長などを経て、2003年に同社フェロー。05年に同社吉野研究室長、15年顧問。17年から名誉フェロー、名城大教授。電池材料メーカーによる技術研究組合「リチウムイオン電池材料評価研究センター」(大阪府)の理事長も歴任。04年に紫綬褒章受章。13年にロシアのノーベル賞ともいわれるグローバルエネルギー賞、18年に日本国際賞、19年に欧州特許庁の欧州発明家賞を受賞。神奈川県在住。71歳。

 【解説】温暖化対策で脚光再び

 電話やパソコンをコンセントから解放し、モバイル情報機器の時代を切り開いたリチウムイオン電池。既に日常に溶け込んだこの技術は今、地球温暖化対策の切り札として、再び脚光を浴びている。

 これから最も伸びる用途とみられるのが電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)、家庭用の蓄電池だ。電源を石炭や石油などの化石燃料から太陽光や風力などの再生可能エネルギーに転換する一方、発電量の不安定さを補うため、電気を電池にためて使う。こうした温室効果ガス排出の削減戦略に電池が有用だとされる。

 2020年から本格始動する温暖化対策の枠組み「パリ協定」で、世界は今世紀後半に温室ガスの人為的な排出と森林による吸収を差し引きゼロにする「脱炭素社会」を目指す。日本も「50年に排出80%減」が目標だ。国内で18年に売れた自動車のうちEVやHVは3割だが、将来はガソリンで動くエンジンに取って代わるとの見方もある。

 特に発展途上国では今後も自動車や電力需要が増える見通しで、こうした国々への普及はさらに進みそうだ。また世界銀行によると、アフリカには、人口の半分以上が電気を使えない国がある。電気へのアクセス向上にも再生可能エネルギーと蓄電池の導入が貢献するとみられる。(井口雄一郎=共同)


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