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衛星守る軍事施設宇宙監視レーダー建設対中露 米軍と情報共有(2019年08月31日掲載)

2019/10/24 15:00
山陽自動車道(左)と国道2号(上)に囲まれた受信所跡地のレーダー建設予定地

山陽自動車道(左)と国道2号(上)に囲まれた受信所跡地のレーダー建設予定地

 防衛省は9月中旬から、山陽小野田市で計画する宇宙監視レーダーの現地工事に入る。宇宙空間に漂うごみから人工衛星を守ることを前面に掲げる一方、中国やロシアが開発する対衛星攻撃兵器「キラー衛星」の監視も重要な役割。米軍と情報共有し自衛隊初の宇宙部隊が運用する新領域の軍事施設だ。着工を前に概要や国の狙いを整理した。

■施設の概要

 レーダーは同市の海上自衛隊山陽受信所跡地(約13万4千平方メートル)に建設する。もともとは潜水艦などを探す海自岩国基地の哨戒機からの情報を受信する施設だったが、2010年に閉鎖し更地となっている。

 防衛省は9月中旬から跡地内の高台(標高約70メートル)の造成工事を進める。約1万2400平方メートルの敷地に丸いカバーで覆った直径約15メートルの巨大なパラボラアンテナを6基設ける。上空へ電波を飛ばし、人工衛星の破片などの「宇宙ごみ」を探知する。日本の衛星に衝突する危険があれば、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携して回避する。

 レーダー施設は無人だが24時間体制で宇宙空間の静止軌道上の日本の衛星を見守る。20年度に東京都府中市の航空自衛隊府中基地に新設される「宇宙作戦隊」が遠隔地で運用する。23年度中に工事を終え、運用を始める予定だ。

■配備の背景

 防衛省は配備目的に「宇宙空間の安定的利用」を挙げる。安全保障上、衛星情報は部隊の正確な位置の把握や通信で重要な役割を占める。一方、中国は07年、弾道ミサイルで自国の衛星を破壊する実験を行い、大量の宇宙ごみが発生。日本の衛星に衝突することが懸念される。

 さらに同省が警戒するのがキラー衛星の存在だ。中国やロシアが開発を進め、衛星同士を接近させて壊したり、機能を妨害したりする。レーダーの整備でこうした対衛星兵器の攻撃も監視できるという。

 昨年12月に改定した「防衛計画の大綱」では宇宙など「新たな領域」強化を打ち出し、レーダーを運用する宇宙部隊の新設も明記。20年までに創設する米軍の「宇宙軍」と歩調を合わせる。レーダー情報は米軍と共有し、宇宙空間でも中ロをけん制する狙いがある。

■地元の反応

 防衛省は28日、現地工事前に地元説明会を開催。住民からは「宇宙ごみの監視ならJAXAがなぜ担当しないのか。平和利用でなく軍事目的ではないか」との批判や、「攻撃目標になるのでは」などの懸念が相次いだ。これに対し防衛省は急増する宇宙ごみの危険性を強調し理解を求めた。

 日本は1969年の国会決議に基づき宇宙開発を平和目的に限定してきた。だが、08年に宇宙基本法が議員立法で成立し非軍事の原則を転換。自衛隊の宇宙領域への進出が加速した。

 レーダー建設に反対する山口県平和委員会の吉岡光則会長は「国は平和利用のようにいうが、真の目的は宇宙の軍事情報の米軍への提供だ」と指摘。「米中ロの宇宙戦争に日本が参戦することにもなる」と警告する。

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