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周防大島衝突 海難審判開けず 賠償額も不透明(2018年11月14日掲載)

2019/10/30 14:23
海上保安庁の現場検証が行われた貨物船。衝突の衝撃でマストが折れ曲がる(10月23日)

海上保安庁の現場検証が行われた貨物船。衝突の衝撃でマストが折れ曲がる(10月23日)

 柳井市と山口県周防大島町を結ぶ大島大橋への貨物船衝突事故を巡り、船長や船員が外国船免許保持者のため行政処分を決める海難審判は開かれない。一方、県などは船会社へ巨額の損害賠償を請求する方針だが、海難事故では船主の賠償責任に上限を定めた法律があり、どこまで補償されるのかは不透明だ。

 インドネシア国籍の男性船長(44)は業務上過失往来危険罪で罰金万円の略式命令が確定。海難審判所によると、2008年の法改正で海難事故の原因究明は運輸安全委員会に引き継がれた。外国船免許は取り消しや業務停止の処分対象外のため、今回の事故で海難審判は開かれないという。

 また、島全域に甚大な被害を及ぼした事故を受け、県などは貨物船所有のドイツの船会社側に賠償請求する構え。現時点で橋や水道管の復旧費は概算でも総額億円。町も断水と橋の通行規制による給水活動や代替輸送の費用を想定し、いずれも全額を請求する予定だ。

 民間企業や島民からも損失補填(ほてん)を求める声が相次ぐ。ホテルは宿泊キャンセルや休業が相次ぎ、断水で農畜産業も打撃を受ける。日々の暮らしでも本来なら不要な出費がかさむ。こうした経済損失も含めると、被害総額は巨額となる見込みだ。

 ただ、船舶事故では損害額が甚大な事例が多いため国際条約には船主が支払う賠償額を制限する規定が存在する。国内法もこれに基づき上限が抑えられる。今回の事故に関しても、海難事故に詳しい大阪弁護士会所属の藤木啓彰弁護士は「船会社側による責任制限の申し立ては可能なため請求額には限度がある」と指摘する。

 こうした事情から、県などは2日、国に対し外国船籍の事故での賠償請求手続きの支援を求める要望書を提出。今後の対応について村岡嗣政知事は記者会見で「庁内に対策チームを設け弁護士と相談しながら進める」としている。(和多正憲、堀晋也、坂本顕)

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