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大島大橋事故 賠償見通せず 山口 貨物船衝突あす1年 額巡り係争 島民憤り(2019年10月21日掲載)

2019/10/30 14:42
事故の復旧工事を終えて正常化した大島大橋。賠償問題の先行きは見えない

事故の復旧工事を終えて正常化した大島大橋。賠償問題の先行きは見えない

 山口県周防大島町と柳井市を結ぶ大島大橋への貨物船衝突事故は22日で1年を迎える。長期断水で町民の生活や地域経済は深刻な打撃を受けたが、賠償問題はいまだに解決のめどが立たない。賠償額を抑える船主責任制限法の手続きに打って出た船会社に対し、町や県は全額賠償を求め係争中。慰謝料を求める町民の訴訟も近く始まるが、長期化の様相に島内ではいらだちや諦めの声が交錯している。

 制限手続きはことし2月、ドイツの船会社の申請で広島地裁が開始決定した。法が定める賠償上限額は約24億5500万円。自治体や事業者、住民が提出した債権届けはこれを優に上回る総額44億1200万円に達する。現在は管理人の弁護士が査定を進める。これまでに開かれた債権者への説明会では弁護士の口から長期化の見込みが示されている。

 船主責任制限法を巡っては、県と町、柳井地域広域水道企業団が3月、「無謀行為」で発生した事故は法の適用外だとして広島高裁に即時抗告した。あくまで全額の賠償を求め、高裁で審理が続いている。

 また、制限法の手続きとは別に、町民96人は7月、1人当たり15万円の慰謝料を船会社に求め山口地裁岩国支部に提訴。「物の損害」が対象の制限手続きには精神的被害は含まれないと主張している。10月25日に第1回口頭弁論がある。いずれの裁判でも司法の判断に注目が集まる。

 船会社は事故後、島に給水船を派遣したが、金銭面では町へ支援金を500万円送っただけ。賠償はあくまで制限法の枠内で対応する考えを県に伝えている。代理人弁護士は「法律にのっとり適切に対応している。考えは裁判所で明らかにする」としている。

 こうした先の見えない状況にいらだちの声を上げる町民は少なくない。観光ミカン園を営む岸田正吉さん(87)は「事故で収入は激減した。全額でなくても生きている間にいくらかの補償はもらいたい」と諦めにも似た思いを吐露する。(余村泰樹)

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