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昆虫 貴重な食物だよ 山口大の井内准教授 高い栄養価 メタボ防ぐ成分(2015年05月11日掲載)
山口大農学部の井内良仁准教授(48)=食品機能化学=が、昆虫食の研究と普及に取り組んでいる。栄養価が高く、餌が少なくて済む。最近では国際機関が食糧危機の解決に向け、昆虫食を勧める報告書を発表した。井内准教授は学内で定期的に試食会を開くとともに、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病などの生活習慣病の発症リスクを高めるメタボリック症候群の予防に有効な成分があるとみて、分析を進める。きっかけは学生の「虫離れ」だった。
昨年12月、山口市吉田の山口大吉田キャンパスで開かれた試食会には学生たち約120人が参加。冷凍保存していたセミやバッタ、コオロギなど構内や裏山で捕まえた虫の料理が並んだ。かき揚げやハンバーグ、カナッペも。井内准教授は「初めて食べる人がほとんど。新鮮な経験だったと思う」と振り返る。
研究室ではコオロギを飼育している。湯通しして、フライパンでこんがり焼く。その姿にたじろぐが、口に運ぶと小エビのような味と食感でどんどん食べられる。研究室の4年三木真里奈さん(21)は2年生のとき、イナゴのつくだ煮を食べたのが昆虫食の初体験。「ウシやブタと同じように虫もかわいいと思えるようになった」と笑う。
▽国連も利用提案
近年、昆虫は食料問題の解決策として注目される。国連食糧農業機関(FAO)は2013年、食料としての昆虫の積極的な利用を提案した。
経済的メリットが大きいことが理由の一つだ。1キロのタンパク質を得るのにウシは10キロ、ブタは5キロの餌が必要だが、コオロギは1・7キロで済む。恒温動物ではない昆虫は体温調節にエネルギーを使う必要がないからだ。飼育時に排出する温室効果ガスの量も格段に抑えられ、飼育に必要な面積もウシやブタの5〜20%で済む。
昆虫はアジアやアフリカを中心に食べられてきた。日本でも昔から昆虫食はあったが、「食べ物として化学的に成分分析がされることは、ほとんどなかった」と井内准教授は話す。
山口大では10年、教育学部や農学部の教員が集まり、医薬品や農薬の開発を目的とした「昆虫推進体」を結成。13年からはメタボ予防のためのグループを新設し、健康に良い成分の解析を進めている。
バッタの仲間には長寿に関係しているというグルコサミンや、糖尿病や血圧上昇に効果があるとされるアスタキサンチンが含まれていることが知られている。井内准教授が人工的にメタボ状態にしたマウスにフリーズドライしたトノサマバッタを与える実験をしたところ、体重増加と脂肪の蓄積を抑える結果が得られた。どの成分が作用したのか、さらに分析を進める。
地元の食品乾燥機メーカー木原製作所(山口市秋穂西)と、昆虫由来のサプリメントの開発も進める。井内准教授は「栄養価が高いだけなく、健康増進や疾患予防に寄与する可能性がある」と話す。
▽「理科離れ」示す
昆虫食を研究し、広めようとしたきっかけの一つは、童謡や童話でなじみがあり、身近な存在であるはずの昆虫の実物を知らない学生が多いことだった。
井内准教授は毎年、農学部の1年生に昆虫の写真を見せ、名前を答えさせてきた。13年度の新入生の正答率はカブトムシこそ100%だったものの、ケラは58%、キリギリスはわずか21%。「理科離れ」の現実を示す数字だった。「昆虫は自然や科学に興味を持つ入り口。食べることで敬遠していた昆虫のイメージを変えるきっかけになる」と、試食会を子どもたちにも広げていく予定でいる。(折口慎一郎)
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