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どうなる大学入試2020 英語民間試験の延期<上>長い混乱 高校に安堵と徒労感 「不公平」議論硬直の末(2019年11月02日掲載)

2019/11/13 15:49
加計高が準備していた共通ID発行申込書。1日が申請の開始日だった(広島県安芸太田町)

加計高が準備していた共通ID発行申込書。1日が申請の開始日だった(広島県安芸太田町)

 文部科学省は1日、大学入学共通テストで導入される英語の民間試験について、来年4月からの実施を延期すると発表した。スタートまで5カ月という押し迫った時期での方向転換に、受験生や高校は揺れる。課題をどう見据え、制度を練り直すのか。中国地方の現場から考える。

 出勤の途中、マイカーの車内で聞くラジオが「延期へ」のニュースを伝えていた。加計高(広島県安芸太田町)の二川一成教頭(55)は、本当かと耳を疑った。学校に着き、インターネットの速報ニュースで萩生田光一文科相の会見があることを知った。複雑な気持ちになった。これまでの苦労は何だったのかという徒労感と、「よかった」という安堵(あんど)感が交ざったような。

 民間試験を活用する新入試制度は、「田舎は不利」と指摘されてきた。中山間地域にある同校の場合、最寄りの試験会場は広島市。車で片道1時間を要する。慣れるために早いうちから受験を重ねようにも、時間や金銭面で負担がある。

 ▽地域住民が補助

 二川教頭は「生徒には不安な思いをさせたくない。その一心で準備をしてきた」と振り返る。地域住民でつくる「加計高校を育てる会」から練習用の受験料の補助が受けられることになった。受験に必要な「共通ID」を大学入試センターに申請するため、記入漏れや誤りがないか教員による点検を済ませたところだった。

 「制度として無理があることは分かっていた。延期の決断は支持したいが、もう少し早く決められなかったか」と二川教頭。民間試験の導入を巡っては、これまでも長い議論が交わされてきたからだ。

 文科省が民間試験活用の方針を示したのは2017年のこと。受験生は原則、高校3年の4〜12月に大学入試センターが認定する民間試験のいずれかを最大2回受け、成績を志願先へ提出する仕組みとなった。

 以来、繰り返し指摘されてきた。「公平性をどう担保するのか」と。経済状況や居住地によって受験機会に格差が生まれかねない。複数の異なる試験の成績を比べ、合否判定に用いることは妥当なのか―。

 ▽「生徒振り回す」

 こうした懸念から大学は成績をどう扱うか態度を決めかねた。中国地方の国公立大16校の方針が出そろったのは今年7月だ。民間試験がいつどこで行われるかの情報もなかなか示されなかった。硬直する議論を動かすきっかけになったのが、皮肉にも萩生田文科相の「身の丈に合わせて頑張って」発言。制度の不条理さがさらけ出された。

 延期決定を受け広島大は1日、「民間試験の受験へ向け熱心に準備を重ねていた高校生の皆さんには、大変申し訳なく思います」とコメントを公表。中国新聞の取材に対し、20年度実施の入試ですべての志願者に民間試験の受験を課すとしていた方針を撤回する考えを示した。

 「生徒を大人の事情で振り回してしまった」と、加計高の二川教頭は残念がる。ただ、生徒たちはもう前を向こうとしているようだ。

 2年の男子生徒(17)は「試験に向けて、先生も自分たちの力に合わせた指導をしてくれてきた」と感謝の言葉を述べた。2年の女子生徒(17)は「受験生や家族にも負担が大きい方法が見直されるのは後輩のためにも良かった。混乱や不公平感がないように見直してほしい」と求めた。(奥田美奈子、山田太一)

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