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夫婦別姓 選べる社会に 広島などで訴訟相次ぐ 現制度 不具合浮かぶ(2018年07月07日掲載)

2019/11/18 14:40

 夫婦が望めば別々の姓を名乗ることができる「選択的夫婦別姓」の導入を求める声が強まっている。ことしに入って広島を含め各地で、夫婦別姓を認めない民法の規定に異を唱える訴訟が相次いでいる。原告たちの声に耳を傾けると、現制度のさまざまな不具合が浮かび上がる。

 広島市南区の医師、恩地いづみさん(62)は東京、広島の男女7人が同時に起こした訴訟の原告の一人だ。夫婦同姓を義務付ける民法や戸籍法の規定は、婚姻の自由を侵害しており違憲だとして5月、国に損害賠償などを求めて広島地裁に提訴した。「名前は私そのもの。名字を変えないと法律婚が認められないのはおかしい」と訴える。

 医師の夫と結婚し、一度は改姓した。職場では旧姓の「恩地」を通称として使っていたが、自分が自分でなくなるような喪失感が消えなかった。夫と話し合い、結婚7年目で形式的に離婚。30年近く事実婚を続け3人の子どもを育てた。

 ▽押し付けに抵抗

 家族は納得しているのに、周囲からは不思議がられた。知人に「どうして改姓しないの」と聞かれるたびに問い返した。ではなぜ、あなたは結婚後に姓を変えたの―と。夫婦は同じ姓にするべきだという価値観を押し付けられることに抵抗を感じる。「誰もが自分らしくいられる、多様な生き方を認める社会になってほしい」と語る。

 仕事上の理由から別姓を望む人もいる。東京の40代の看護師女性は、恩地さんとともに原告となった。

 女性は結婚して夫の姓に変えるのは「キャリアの断絶になる」と感じた。旧姓を通称として名乗ることもできるものの、看護師の国家資格は戸籍名での登録しかできない。「職場で二つの名前を使い分ける理由が見つからなかった」と打ち明ける。

 結局、女性は事実婚を選んだ。すると、法律婚と比べて多くの面で不利益が生じた。税法上の優遇措置が受けられない。遺言がなければ遺産が相続できない。さらに、子どもの親権は片方の親しか持てない。この女性の場合、3人の子どもの親権は夫にある。緊急時に親として認められなかったら―との不安が付きまとう。

 「私たちのような家族も法的に認めてもらいたい」と女性。「同姓を望む人を否定するわけじゃない。ただ選択肢を広げてほしいだけなのに、なぜ難しいのでしょうか」と力を込める。

 ▽9割以上が女性

 結婚後に改姓しているのは9割以上が女性のため、選択的夫婦別姓は女性の問題と捉えられがちだ。だが、男性からも制度の見直しを求める声が上がり始めている。

 ソフトウエア開発会社「サイボウズ」(東京)の青野慶久社長らは1月、夫婦が別姓を選択できないのは違憲だとして、国に損害賠償を求める裁判を起こした。戸籍上、妻の姓を選んだが二つの姓の使い分けが仕事上で大きな経済的損失を招いているという。

 映画監督の想田和弘さんと妻の柏木規与子さんも6月、国を相手に裁判を起こした。米国ニューヨーク州で結婚。婚姻は日本でも有効だが、名字が違うため戸籍に婚姻の事実が記載されないことに抗議する。

 想田さん夫妻や恩地さんたち7人の代理人を務める野口敏彦弁護士は「夫婦が同姓しか選べない制度は、時代に合わなくなってきている」と指摘する。共働き世帯の増加やグローバル化にとどまらない。少子化が進む中、先祖代々の姓を守るために結婚をしない女性もいるという。

 野口弁護士は「別姓の選択肢がないことがもたらす負の側面から目をそらすべきではない」と強調した。(標葉知美)

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