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ばっちゃんと食べて語ろう 「悪さをする子はね。たいていおなかをすかせとる」 非行防ぐ食育活動続ける元保護司(2014年09月29日掲載)
かれこれ30年以上になる。家庭や学校に居場所がない子どもたちに温かいご飯を食べさせ、空腹と寂しい心を満たしてきた。「ばっちゃん」と呼ばれ、親しまれる広島市中区基町の元保護司、中本忠子(ちかこ)さん(80)。子どもを非行に走らせないための食育活動は地域に根付き、この夏、法務省保護局から特別感謝状が贈られた。子どもたちが抱える困難に、地域の大人はどう向き合うか―。ばっちゃんのまなざしに、そのヒントが詰まっている。
「悪さする子はね、たいていおなかをすかせとる」。そう言って、中本さんは活動の始まりを振り返る。1980年、保護司になった。間もなく中学2年の少年を担当する。どう言って聞かせてもシンナーの吸引をやめない。なぜか。しばらくして中本さんは気付いた。空腹を紛らわせるためではないか、と。
食事をさせ、時には弁当を持って帰らせるうち、少年はシンナーをやめた。そして、中本さんの家に友人を連れてくるようになった。万引したり、人を殴ったりして「非行少年」と呼ばれる子どもたち。やっぱりみんな、おなかをすかせていた。
「私一人じゃどうにもならん。地域に手伝ってもらわんと」。公民館の調理室に拠点を移し、中地区更生保護女性会の基町地域の仲間たちと、手料理で子どもたちを迎えるようになった。約10年前、「食べて語ろう会」と名付け、月に2回開いている。活動費は、赤い羽根共同募金の助成金や地域でのバザーの売り上げなどを当てている。
多い日は40人ほどが訪れる。親が食事を作らなかったり、何日も家を空けていたり…。安心できる場所を求めて、中本さんを頼ってくる子どもは少なくない。「親を責めても、子は救えんでしょ。親ができん部分を私らがお手伝いするだけ」と一貫して言う。
出会った子どもたちに、中本さんはこう語り掛ける。「えらかった、えらかった。ようここまでたどり着いてきたの」。突っ張っていた子どもの顔がふっと和らぎ、幼さが戻る。かつてリストカットを繰り返していた中学3年の少年(15)は、「今はせんよ」と言った。「ばっちゃんと約束したけえ。裏切れんけえ」
あそこに行けば、信頼できる大人がいる―。「子どもたちが困ったとき、迷ったとき、思い出してもらいたいんよね」。それが、76歳で保護司を引退した後も「食べて語ろう会」を引っ張る理由だ。
「私ら、お金の支援はできんけんね。ただ、時間の投資はできる。話をじっくり聞いてやるの。親に代わって運動会に行ったり、授業参観に行ったりすることも。そうして一生懸命、伝えるんよ。1人じゃないんぞ、ばっちゃんが見よるぞって」
中本さんには宝物がある。自宅のたんすの引き出しが一つ埋まるほどの、たくさんのエプロン。大人になり、親になったかつての子どもたちから、母の日や敬老の日に送られてくる。「真面目に働きよるよ、頑張っとるよ」の証し。「おお、立派になって」とつぶやきながら、一人一人の顔を思い浮かべてみる。(木ノ元陽子)
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