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萌えサミット 仕掛け人(2019年08月20日掲載)

2020/1/12 15:06
萌えサミットのポスターに囲まれ満面の笑みを浮かべる今治さん

萌えサミットのポスターに囲まれ満面の笑みを浮かべる今治さん

 仕上がったばかりの告知ポスターの出来栄えに満足そうに笑みを浮かべる。今治総一郎さん(45)は10月13日に周南市中心部で開催する漫画やアニメ、アイドルなどサブカルチャーの祭典「萌(も)えサミット」の実行委員会の代表を務める。今年で9回目を迎え「西日本で最大級のイベントに育ってきた」と胸を張る。

 昨年は歩行者天国の銀座通に全国から405人のコスプレーヤーがアニメなどの登場人物に扮(ふん)して集結。キャラクターで飾った「痛車(いたしゃ)」が並び、アイドルが歌声を響かせる。同人誌の展示即売会「コミックマーケット」もにぎわい、1万1千人の人出は過去最多だ。

 よほどの漫画、アニメ好きなのかと思いきや「私自身はオタクじゃないんですよ。時間と空間の調整役かな」という。イベントに向け約60人のメンバーと隔週で集まり打ち合わせを繰り返す。「9年もやってるとだいぶ詳しくなったけどメンバーに比べると全然。知ったかぶりすると怒られるので控えてます」と笑う。

 ▽「周南を聖地に」

 結婚を機に東京からUターンした下松市の塗装会社の3代目。周南青年会議所で地域おこしのまとめ役に就いたのが転機になった。何か売り出せるものはないか。ひょんなことから人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の著名なアニメーターの貞本義行さんが周南出身だと知った。「出身地は世界に一つ。周南を聖地にするぞ」とひらめいた。

 しかし周囲の反応は「いかがわしい」「恥ずかしいからやめてくれ」と散々な反応だった。だが、怪しむ仲間を「とにかくやったもん勝ち」と粘り強く説得。2011年に初開催にこぎ着けた。評判は口コミやネットで徐々に広まった。「しゅうニャン市」などゆるい広報戦略を進める前市長もコスプレで参加してくれた。今では市内約40社が協賛に名乗りを上げる。

 人気声優や初代ゴジラに入って演じたスーツアクターなど各業界で活躍している出身者にオファーを続け、多様なゲストが駆け付けてくれている。

 ただ、今年のイベントは35人が犠牲になったアニメ制作会社「京都アニメーション」の放火殺人事件が暗い影を落とす。「事件のせいでアニメが好きな人たちへの偏見が強まるのではないか」と懸念する。心を痛めるファンが思いを共有できるよう会場に寄せ書きのコーナーを検討している。

 ▽主役の日を提供

 アニメなどサブカルチャーは政府が海外へのブランド戦略「クールジャパン」の柱の一つに掲げるほど認知度は高まった。だが、今治さんは「オタクと呼ばれる人の中にはまだ認められていないと感じる人は少なくない。だからこそ自分たちが街の主役になれる日を提供したい」と強調する。

 イベントを開き続ける情熱について「根底にあるのは郷土愛。訪れた人が周南で笑顔になっているのを見るのが好きだから」と話す今治さん。多様な趣味や嗜好(しこう)の人たちを受容する優しい街になってほしいと願う。(川上裕)

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