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残骨灰売却検討 広島市の火葬場、金やプラチナなど含有 政令市では導入の動きも(2019年12月13日掲載)

2020/1/26 12:52
広島市東区の市営火葬場「永安館」。市営火葬場は計5施設ある

広島市東区の市営火葬場「永安館」。市営火葬場は計5施設ある

 広島市は、市営の火葬場で生じた希少金属を含む「残骨灰」を売却し、市の収入とする仕組みの導入について検討を始めた。全国の自治体で同様の動きが広がりつつあるが、遺族感情などに配慮して導入を見送るケースもある。市は年度内に市民アンケートを実施する方針で、「導入の可否については市民の意見を尊重して判断する」としている。

 残骨灰は火葬後の遺骨を骨つぼなどに収めた後、さらに残る骨や灰。治療した歯や人工関節などに使われていた金や銀、プラチナなどの金属が含まれ、抽出、精錬すれば、売却して収入につなげることができる。

 市営の火葬場は5カ所あり、隣接の納骨堂も含め、年間約3億6千万円で指定管理者が運営する。過去5年の残骨灰は年間37・4〜30・9トン。有害物質の除去や埋葬などを専門業者に委託し、売却はしていない。

 政令指定都市では売却に踏み切る動きが相次ぐ。20政令市のうち横浜や仙台、岡山など10市が、売却の仕組みを導入。残骨灰を直接売ったり、業者から金属だけを返却してもらったりと手法はさまざまで、2018年度は200万〜1億500万円の収入を得ている。

 一方、札幌市やさいたま市など6市は「故人の尊厳の問題」などとして売却を明確に否定。熊本市は売却に向けた制度設計を進め、広島市を含む残る3市は「慎重に検討」とする。

 広島市は市民アンケートの結果を踏まえ、導入の可否や仕組みを検討する。環境衛生課の奥田学・管理担当課長は「全国では売却への流れがあるが、遺族感情など繊細な問題があることは認識している。あくまで市民の意見を尊重する」としている。(明知隼二)

    ◇

 ▽政令市で導入の動き 専門家「慎重な議論を」

 残骨灰の売却に踏み切る自治体では、厳しい財政事情に加えて、灰の処理を請け負った業者が非公式に金属を売却する実態の是正を目指すケースが多い。残骨灰の扱いについては法的な規定がなく、各自治体に委ねられているのが実情だ。専門家は「人間の死生観にも関わる問題」として慎重な議論を求めている。

 横浜市は2017年度から残骨灰の売却を開始し、18年度は52トンで1億500万円の収入を得た。それまでは業者に処理を委託していたが、極端な低価格で入札するケースが相次いだ。請け負った業者が抽出した金属を売って利益を得ていたとみられ、同市は「契約や処理の透明性を確保する必要に迫られていた」と説明する。現在は、最終処分を引き受ける条件で灰を直接売却している。

 浜松市や仙台市も相次ぐ0円や1円での落札を背景に、いずれも17年度に単純な処理委託から転換した。業者から処理済みの金属だけを返還してもらったり、金属の売却は任せて利益だけを返納してもらったりして、市の収入に。関連施設の整備などに充てる。

 同じ「1円」問題に悩む自治体でも対応は異なる。静岡市は「過去には売却も検討したが、庁内でも抵抗感が強く具体化はしていない」。北九州市は、過去に市民から「故人の尊厳に関わる」などの批判があり、1991年から売却をやめた。「現状に問題意識はあるが、過去の経緯もあり慎重に検討したい」とする。

 国が18年に初めて実施した抽出調査では、回答した94自治体のうち20自治体が何らかの形で売却していた。厚生労働省は「遺棄すれば法に触れる遺骨と異なり、残骨灰は法的な規定がなく、扱いの基準も示していない。処理は地域の実情を踏まえ、自治体の判断に委ねている」とする。

 静岡大の竹之内裕文教授(哲学・死生学)は「遺体の一部だったものを売る行為は、私たちの死生観を揺るがしかねない」と、市民を巻き込んだ丁寧な議論を求める。「私たちは多くの死者を見送る『多死社会』の入り口にある。死をどう受け止めるかに正解はないが、遺体に対する合理主義がどこまで許されるのか、社会全体で議論を深める機会とすべきだ」としている。(明知隼二)


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