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事業費1・4倍の「異常事態」に 課題は依然として山積(2019年11月14日掲載)

2020/1/26 12:48
記者会見で巨額の増額が必要になったと説明し、頭を下げる石岡理事長(右)

記者会見で巨額の増額が必要になったと説明し、頭を下げる石岡理事長(右)

 広島高速5号二葉山トンネル(広島市東区、1・8キロ)の整備で大きな焦点だった事業費の増額幅が14日、87億2千万円と定まった。広島県と広島市が公金をつぎ込んだ大型事業は、費用が当初の1・4倍に膨らむ「異常事態」となった。さらなる公費負担が避けられない中、県と市が各議会の理解を得られるかどうかなど、事業を進めるための課題は依然として山積している。

 「県民、市民におわびする」。事業を手掛ける広島高速道路公社の石岡輝久理事長はこの日、東区の公社で開いた記者会見であらためて謝罪し、頭を下げた。謝罪の原因として語気を強めたのは、結果的に事業費を「大幅に増額せざるを得なかった」点だった。

 昨年10月の問題公表から1年余り。ようやく公社が増額幅をつまびらかにできたのは、受注した共同企業体(JV)と進めてきた協議が整ったためだ。「ようやくここまで到達できたというのが本音」。公社幹部は胸をなで下ろす。

 しかし、合意通りの増額には、国に届け出た高速5号の整備計画を変える必要があり、出資者の県と市の両議会の同意が欠かせない。県と市はすでに、関連議案をそれぞれの議会に提出する方向で動き始めた。

 議会を説得できるかどうかは楽観視できない。「後からこれだけの金額を増やせるのなら、最初の契約は何だったのか」。県議会の一部会派からは早くも厳しい批判が出る。契約の経過や、誰の責任で問題が起きたのかなど、説明が尽くされていない点は多い。湯崎英彦知事の県政運営を支える最大会派の自民議連にも「真相が解明されていないのに、やすやすと増額を認めるわけにはいかん」(中堅県議)との声がある。

 事業費の増額で新たな課題も浮上する。公共事業では一般的に、利用者にもたらされる便益などを数値化し、事業費や維持費などの総費用で割った指標「費用便益比」が重視される。指標が「1」を下回れば投資に見合わない事業と判断され、事業の見直しや中止を迫られるケースもある。

 5号の増額前の費用便益比は「1・0」で、投資効果はぎりぎりの水準にあった。事業費が増えても、この指標をクリアできるのか―。公社はこの日、「最新の交通量などを反映させて新たな費用対効果を出す」と述べるにとどめた。

 このほか、掘削機の故障による建設スケジュールの遅れもある。公社はこの日、目標としていた2020年度末の開通を「諦めざるを得ない」と初めて明言した。複数の関係者によると、開通時期を2年程度先送りする方向で県や市と協議を進めている。

 高速5号は、東区のJR広島駅北口と山陽自動車道の接続時間を短縮し、広島空港(三原市)のアクセスを良くする切り札とされている。県は21年4月の空港民営化に弾みをつけるためにも、民営化前の開通を目指したが、狙いは崩れる見込みとなった。

 トンネルの地上部で地盤沈下の不安と向き合う住民からは切実な声が上がる。「二葉山トンネル建設に反対する牛田東三丁目の会」の棚谷彰代表(78)は「最も解明が待たれる不可解な工事契約への疑念は全く晴れない。県と市の議会には、徹底した真相解明に尽くす責任がある」と注文する。

 増額幅が定まったことを受けて、湯崎知事は「県民の信頼回復に努め、着実に事業を推進していく」、広島市の松井一実市長は「安全・安心かつ着実に早期完成が図られるよう、適切に公社を支援していく」とコメントした。公社を隠れ蓑にするのではなく、前面に立って説明責任を果たしていく姿勢が、県と市の双方に求められている。(樋口浩二)

 ▽石岡理事長 一問一答

 広島高速道路公社で記者会見した石岡輝久理事長の主な発言は次の通り。

 大幅な増額を県民、市民におわびする。必要で適正な金額だと理解してほしい。早期の完成とともに信頼回復に努める。理事長として、この事業が軌道に乗るよういま少しだけ微力を尽くした後、退任するべきだと考えている。

 ―増額分を今後、どう確保しますか。

 県、市の出資金や国の無利子貸し付けなどが組み合わさっている。県と市の追加負担を含めて、どんな手法があるのか、県、市と協議しながら進めていく。

 ―完成時期への影響は。

 掘削機のトラブルで工事が5カ月間止まり、その後も慎重に施工している。現在、目標としている2020年度は非常に難しく、諦めざるを得ない。今後の工程を精査しており、結果は速やかに公表したい。

 ―第三者委員会の調査で契約後の増額は公社から持ちかけたとされました。不適切な契約をした背景は。

 完成時期を公表していたから(契約を)前に進めたのではないかと第三者委員会で言われている。公社としてもそう認識している。

 ―今後、さらなる解明を進めないのですか。

 第三者委の報告書がすべてだ。専門家が長時間協議した結果なので尊重する。公社としてできることはした。これ以上の追究は考えていない。

 ―退任の時期は。

 そこは私が判断したい。いつごろというのを今、定めているわけではない。


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