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被服支廠、解体着手先送りへ 広島知事、議会3会派の要望踏まえ
広島県の湯崎英彦知事は31日、被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(広島市南区)の安全対策の原案として打ち出した「2棟解体、1棟の外観保存」について、2020年度としてきた着手を先送りする方針を固めた。自身の県政運営を支える県議会会派から「さらに議論を深めるべきだ」と要望されたのを踏まえた。解体と外観保存に必要な事業費を、20年度当初予算案には盛り込まない方向で調整する。
県は昨年12月にまとめた原案に、保有する3棟のうち爆心地に最も近い1号棟の外観を保存し、2、3号棟を解体・撤去すると明記した。外観保存は21年度末、解体・撤去は22年度末の完了を目指すとしたが、ともに先送りとなる。原案の公表後に熱を帯びた存廃議論の決着は、20年度以降に持ち越される。
湯崎知事はこの日、県議会(64人)の中本隆志議長と知事室で会談。非公開の協議で、中本議長から原案について「今、方向性を決めるのは時期尚早」と伝えられた。この考えは、中本議長が所属する最大会派の自民議連(33人)と、議会運営で協調する民主県政会(14人)公明党議員団(6人)の3会派で一致する。
3会派の判断の背景には、原案への反対が60%を占めた県の意見公募の速報結果や、市民団体や被爆者団体による解体反対の動きがある。原案を支持する立場を鮮明にしていた自民議連でも「最終的な方針決定を急ぐべきではない」との声が強まり、中本議長による要望につながった。
湯崎知事は会談後の取材には「3会派の要望を伝えていただいた。今後の対応を検討する」と述べるにとどめたが、解体と外観保存の先送りへかじを切ると決めた。築107年を迎えた建物の老朽化を受けて、20年度当初予算案には、原案のうち市道に隣接する建物西側の外壁を補強するための費用などを盛り込む方向で調整する。(樋口浩二)
<クリック>旧陸軍被服支廠 1913年に完成し、旧陸軍の軍服や軍靴を製造していた施設で、広島市内最大級の被爆建物となる。爆心地の南東2・7キロにあり、13棟あった倉庫のうち4棟がL字形に残る。1〜3号棟を所有する広島県は、建物の劣化が進み、地震による倒壊などで近くの住民や通行人に危害を及ぼしかねないとして、昨年12月に「2棟解体、1棟の外観保存」とする安全対策の原案を公表した。もう一つの4号棟については、保有する国が解体を含めて検討している。
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