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【やまぐちSL復活40年】<下>レトロで快適 全盛期を再現、細部まで(2019年08月02日掲載)

2020/3/10 22:57
グリーン車の専用ラウンジ席で優雅に沿線の景色を楽しむ乗客

グリーン車の専用ラウンジ席で優雅に沿線の景色を楽しむ乗客

 半円形の屋根の外観に木目調の内装。1979年に復活したやまぐち号について、JR西日本は2017年9月、古くなった客車をリニューアルした。5両から成る新造客車のコンセプトはSL全盛期の昭和初期の旧型客車を快適に再現することだった。

 ▽特急展望車復刻

 1号車はグリーン車。38年に製造された特急の展望車「マイテ49」を復刻した。じゅうたんが敷かれた車内は凸型の曲線を描く天井に2列と1列の広々としたシート。左右に6人が座れるソファが並ぶラウンジ席と展望デッキを備え沿線の景色を優雅に楽しめる。

 名所の一つ、山あいの長門峡鉄橋(山口市)にさしかかると、乗客は線路沿いでカメラを構える鉄道ファンに手を振る。防府市の会社員近森一朗さん(46)は「グリーン車ができてより旅が楽しめる」と喜ぶ。チケットは発売開始の運行1カ月前に申し込んでも人気でなかなか取れない。

 残る4両のうち指定席の2〜4号車は戦前、戦後に全国で活躍した「オハ35」がモデルだ。座席は当時と同じ木目のフレームに青いシート。マツ材を使った床も幅や長さを当時に合わせた。日よけもよろい戸。トイレの床も当時と同じタイルを使うこだわりぶりだ。

 5号車は戦前を代表する客車「オハ31」をモデルにした。バリアフリー対応の2席を設け、トイレも車いすで利用できる。

 3号車には40席のほか、山口線の映像で運転を体験できるシミュレーターと運転室のかまに石炭を投げ入れるゲームを用意。車内抽選で当たった乗客が機関士や機関助士の気分を味わえる。運転体験をした兵庫県姫路市の不動産鑑定士田辺邦彦さん(75)は「ゲームがあれば子どもも退屈しない」と納得顔だった。

 ▽最優秀賞に選出

 客車の設計に携わったJR西日本車両設計室の徳永哲也さん(31)は「昔ながらの雰囲気をより楽しんでいただきたかった。洗面台も保存している昔のものからかたどって再現するなど細部までこだわった」と話す。客車は16年1月、新潟県の車両メーカー「新潟トランシス」に発注。徳永さんはメーカーとの交渉窓口を担当した。JR西日本が明治維新150年の前年の17年秋に始める観光キャンペーンに間に合わせるのが至上命令だったが、東京五輪に向けた建設ラッシュで材料調達が難航。「間に合うのか」と肝を冷やした。

 客車はデビュー翌年、鉄道ファンの団体「鉄道友の会」から最優秀の「ブルーリボン賞」に選ばれた。「今後もSLを運行していく姿勢が感じられる」との評価だ。徳永さんは「ほかにはない唯一無二の車両に仕上がった。やまぐち号が今後も長く愛されるきっかけになれば」と願う。

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