地域ニュース

死の影背負う男女の青春 大林監督が新作「花筐」(2017年12月2日掲載)

2020/4/11 10:36
「『花筐』の映画化は長年の夢だった」と語る大林監督(撮影・浜岡学)

「『花筐』の映画化は長年の夢だった」と語る大林監督(撮影・浜岡学)

 尾道市出身の大林宣彦監督(79)が新作「花筐(はながたみ)」を完成させた。日中戦争が始まる前年、1936年に発表された作家檀一雄の同名小説を基に、死の影を背負う男女の青春を耽美(たんび)的につづる2時間49分の大作。末期がんを宣告されながら撮影を続けた大林監督は「戦争が過去の出来事とは感じられなくなってきた今、この映画を作るべきだと決意した」と語った。

 映画の舞台は太平洋戦争が迫る41年、城下町の風情に西洋文明の香りが混じる佐賀県唐津。両親と暮らしたオランダから帰国した17歳の榊山(窪塚俊介)は、大学予備校に入学し、無口で美形の鵜飼(満島真之介)、文学青年の吉良(長塚圭史)と知り合う。

 時にぶつかり合い、友情を育む3人。榊山は、若き叔母(常盤貴子)の家で療養している、いとこの美那(矢作穂香)に恋心を抱くが―。

 大林監督は、39歳での商業映画デビュー前に「花筐」を読み、当時、肺がんで病床にあった檀を訪れて映画化の許可を得た。脚本を書き上げたが、デビュー作は別作品に。以来40年間、「青春が戦争の犠牲になった檀さんたちの世代の断念と覚悟を映画にする力が、平和ぼけの中で生きてきた私たちにあるのだろうか」と自問し続けてきたという。

 近年、相次いで戦争をテーマにした作品を発表。集大成として「花筐」の撮影に取りかかった昨年8月、末期の肺がんとの診断を受けた。「その瞬間、『うれしさ』がこみ上げた。私自身が死に向き合う状況になり、これで檀さんの痛みを映画化する資格がもらえたと」。一時は余命3カ月を宣告されたが、抗がん剤治療で回復に向かい、完成にこぎ着けた。

 劇中には、当時の治安維持法による思想の締め付けを示唆するシーンがある。撮影中、「共謀罪」法が成立したニュースに接し、急きょ脚本に盛り込んだ。「映画を(試写で)見た若い人たちが、戦争を人ごとではないと受け止めてくれたのがうれしい」

 現在も治療は続くが、がんは小康状態という。公開を前に日本記者クラブ(東京)であった会見では、同じ広島県出身の故新藤兼人監督が原爆投下の瞬間を映像化する構想を抱いていたことにも触れ、「私なりの原爆の映画を作るために生かされているのだなと自覚している」とも語った。

 16日から東京などで上映が始まり、中国地方では来年1月中旬の八丁座(広島市中区)での公開などが予定されている。(西村文)

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

アーカイブの最新記事
一覧