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「命を守る」細心の対応 感染症指定医療機関の福山市民病院

2020/4/22 23:02
新型コロナウイルスの感染者が入院している福山市民病院の病棟。感染を防ぐガウンを身に着けた看護師が病室を行き来する(撮影・井上貴博)

新型コロナウイルスの感染者が入院している福山市民病院の病棟。感染を防ぐガウンを身に着けた看護師が病室を行き来する(撮影・井上貴博)

 広島県全体で新型コロナウイルスの感染者が急増し、感染症指定医療機関の病床計30床だけでは入院を受け入れられなくなっている。今、増え続ける感染者に、病院はどのように対応しているのか。広島県東部で唯一の指定医療機関、福山市民病院を訪ねた。

 ■入院治療

 福山市民病院(506床)は、病棟の一つを新型コロナウイルスの感染者専用に充てている。感染防止のためのガウンをまとった看護師が、廊下と病室を行き来する。廊下には、こうした防御具を付けた医療者や患者が歩くスペースと、その他の医療者たちが歩くスペースをテープで区切ってある。

 県東部6市町の感染者は計20人を超えた。福山市民病院が備えていた感染症病床6床を既に上回った。現在は、同じ階の病棟一つを感染者専用に替えた。受け入れベッド数は非公表だが、現時点では、県東部で入院が必要な感染者を断ることはないという。

 福山市病院事業管理者の高倉範尚医師(72)は「安全のため、感染症患者と一般患者を隣り合う病室で診ることはできない。さらに感染者が増えると今後も病棟まるごとを感染者向けに空けることになる」と説明する。

 現時点で受け入れている感染者の中には、手厚い看護の必要な高齢患者や人工呼吸器を使う重症患者がほとんどいない。しかし今後、そうした患者が増えると、現場の負担は格段に大きくなることが予想される。軽症なら複数の患者を1人の看護師で受け持つが、人工呼吸器が必要な重症になると患者1人に2人以上の看護師を充てることになる。

 入院患者の診療には、内科医師のうち4人を配置している。患者が増えると他科の医師にも応援を頼むことになり、一般診療を縮小せざるを得ないことも出てくるという。退職した医師や看護師に土日曜日の応援を頼む検討も始めている。

 今月、県東部で福山市民病院以外にも感染患者の入院を引き受ける病院が決まった。人工呼吸器が必要な重症者の入院は福山市民病院で主に受け持ち、症状が落ち着いている患者はその他の病院で診るなど役割分担していく方針だ。

 無症状や軽症の場合は自宅やホテルで療養してもらうことも、医療崩壊を防ぐ鍵となる。高倉医師は「入院ベッドが埋まっていることで、新型コロナウイルス感染症はもちろん、ほかの病気の重症者の命を守る治療が滞ってはいけない」と強調する。

 ■検査

 福山市民病院はこれまで、福山市や周辺地域の検査の最前線の場でもあった。取材に訪れた日も、病院の外には保健所の指示で検査に来た人の車の列があった。症状のある人は院内で診察し、鼻の奥の粘液を「検体」として採取する。

 感染者の接触者で症状のない人は詳しい診察をしなくてもいいため、車に乗ってもらったまま検体を取る。いわゆる「ドライブスルー方式」。4月初めに取り入れたという。

 現在は近くの協力医療機関でも検体採取してもらえるようになった。高倉医師は「助かっている。もっと感染者が増えれば、検体採取を専門で担う発熱外来を各地に設置することも必要になる。指定医療機関は入院治療に専念し、役割分担を図るべきだ」と話す。

 ■一般診療

 新型コロナウイルスの感染者の受け入れは、福山市民病院の一般診療にも影響を及ぼしている。4月以降、経過観察のための内視鏡検査を中止したり、急ぎではない手術を延期したりしている。その一番の目的は、院内感染のリスクを少しでも減らすことだ。

 高倉医師は「院内感染が最も怖い」と話す。緩やかな感染者の増加ならば、ほかの診療を縮小してでも対応できる。だが、院内感染が起こると医療全体が止まりかねない。麻酔科の医師が感染したため、すべての手術ができなくなった病院もあり、警戒を強める。

 医療者を守る資材は、地元企業などの寄付もあって数カ月分を確保しているが、この先の不足の懸念は残る。高倉医師は「地域を支える医療機関として役割を果たしていきたい。最前線の医療スタッフを守る目配りは、国がしっかりしてほしい」と訴える。「スタッフは最大限の努力をしている。誹謗(ひぼう)中傷はやめてほしい」と力を込めた。(衣川圭) 

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  • 「新型コロナウイルス感染症の治療に全力を尽くしたい」と語る高倉医師(撮影・井上貴博)

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