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中国地方の田植え、手伝いの家族や若者の姿なく 新型コロナで帰省自粛

2020/5/2
体験会を中止した井仁の棚田の様子を確認する河野さん。今年は住民グループのメンバーだけで田植えをする(広島県安芸太田町井仁)

体験会を中止した井仁の棚田の様子を確認する河野さん。今年は住民グループのメンバーだけで田植えをする(広島県安芸太田町井仁)

 大型連休の前後に本格化する中国山地の田植えが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて様変わりしている。国の緊急事態宣言などを踏まえて、外出や移動の自粛が呼び掛けられる中、帰省する家族や、作業に加勢する若者たちのいない光景が田園地域に広がる。山里は例年に比べ寂しい農繁期を迎えている。

 「感染防止のため、戻らない方がいいという話になった」。庄原市比和町の三谷美登さん(87)はことし、県内から駆け付けてもらっている息子、娘夫婦に田植えを手伝ってもらうのをやめることにした。例年は2日間で終える作業。「機械化しているけど、1人だと3日間でも済まないかもしれない」とこぼす。

 連休中の中山間地域では例年、出身者や親戚が帰省して一緒に田植えをし、その後に食事を囲んでだんらんする姿が目立つ。ただ、今年は新型コロナがその動きをはばむ。広島県安芸太田町の農業男性(77)も、関西に住む孫へ帰省を控えるよう伝えた。にぎやかな時間を楽しみにしていたが、「もし感染していたら、みんなに迷惑を掛けることになるからね」とうつむく。

 田植え時期を大幅にずらすことはできないため、県北部では営農法人や知人に協力を求める人も出ている。今年は関西に住む弟の応援がないという庄原市東城町の今岡浩さん(64)は近くの同級生の内田亘さん(64)に手助けしてもらうつもりだ。内田さんは「地域は60、70代ばかりだが、支え合うしかない」と話す。

 ただ、中国地方は稲作を集落営農などで組織化している地域も多く、全体として新型コロナ感染拡大が生産に深刻な影響を及ぼすことはなさそうだ。

 稲作に関わるイベントや行事も影響を受けている。「日本の棚田百選」の認定を受ける同県安芸太田町井仁地区では、住民グループ「いにぴちゅ会」が毎年6月に開いてきた体験会の中止を決めた。家族連れや大学生が参加する恒例行事は約20年続くが今年はグループのメンバーだけで11アールの作業をする。

 河野司会長(74)は「井仁地区や先人が築いた棚田を知ってもらう機会なので寂しいが、仕方ない。皆が集う秋の収穫体験会を楽しみに作業したい」と話す。

 広島市安佐北区で休耕田再生などの活動をしている一般社団法人「ふるさと楽舎」も今年の田植えイベントをやめ、スタッフだけで20アールの田植えをする。同県北広島町では新庄、原東、壬生の三つの「花田植」が中止に。庄原市では4年に1度の「比和牛供養田植」の1年延期も決まった。(山田太一、小島正和、伊藤友一、重田広志) 

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