介護施設、感染防止に苦心 高齢者に運動機能低下も 三次でクラスター発生1カ月
広島県内初の新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が三次市内の通所介護施設などで発生し、1カ月が過ぎた。クラスター発生を受けて市内の介護福祉施設の一部が事業を休止、縮小したため、十分な介護を受けられず運動機能が衰える高齢者が出るなど、市民生活への影響も明らかになっている。施設側もサービス提供と感染防止の両立に苦心し、手探りで運営を続けている。
「日々できる運動をしっかりと聞いておけばよかった」。80代の母親を三次市内の自宅で介護している50代の主婦は悔やむ。母親が利用していた施設は介護サービスを再開したものの、密集を防ぐため利用制限を設けており、自宅での介護は1カ月にも及ぶ。主婦は母親の運動機能を維持できるか不安を募らせる。
別の80代の男性は、妻が利用する介護施設が休止していた間、「家事が進まず困った」と明かす。ある施設の関係者は「サービスを長期間受けられないと、高齢者や家族の生活リズムを乱す一因になる。認知症があればさらに大変だ」と気をもむ。
■スタッフが退職
施設側も苦心する。同市下川立町のかわち小規模多機能施設「ぬくもり」は、入浴や弁当の配送、寝たきりの高齢者のパット交換など、家族と相談して必要最低限のサービス提供にとどめている。複数人が集まるホールは利用時間をずらしている。角谷浩規副施設長は「他の施設と情報交換しているが、感染防止の基準がなく不安」と話す。
小規模の施設では経営への影響も深刻化している。訪問介護施設などを運営する役員男性は「受け入れ人数の制限など感染防止策を取れば、収入は減少する。経営はかなり厳しい」と漏らす。さらに、高齢のスタッフや自宅で祖父母の世話をしているスタッフが、感染リスクを避けるために退職。元の体制に戻せるか見通せないという。
■市に情報求める
三和町のデイサービスゆーあいの田村芳和施設長は「このまま縮小が続くと赤字になり、今後の給与の支払いも不安になる」として、7日にほぼ通常の運営に戻した。今後は、国や市の支援制度を活用して感染防止策を取りながら事業を続ける考えだ。
グループホーム事業所などでつくる「三次地域密着型サービス事業所連絡会」は、各施設にアンケートを実施。感染状況についての正確で迅速な情報提供や介護事業への具体的な対応策を求める回答が多かった。重信万里代表は「利用者もスタッフも安心して施設やサービスを利用できるよう、正確な情報を市に求めたい」と話している。(小山顕)
関連記事「感染者らへ中傷許せぬ 広島知事・三次市長、対談ライブ配信」
関連記事「三次・庄原・安芸高田市、独自の支援策 新型コロナ」
広島市中区の平和記念公園内の市道を自転車で走行中、裏返しになっていた側溝の金属製のふたに前輪が引っかかって転倒し、けがをしたとして市内の自営業男性(73)が市道を管理する市に約320万円の損害賠償を...
広島県で20日、新たに57人の新型コロナウイルス感染が確認された。広島市は39人と前日の8人から急増。この他は福山市9人、呉市5人など。また、広島市と福山市は、医療機関に入院していた各2人、計4人が...
岡山県では20日、30人の新型コロナウイルス感染が明らかになった。県内の感染確認は2153人となった。 内訳は岡山市16人、倉敷市8人、玉野市と瀬戸内市が各2人、総社市と新見市が各1人。 30人のう...
安芸高田市の石丸伸二市長が、市議会に対し「定例会の一般質問には答えられない」と発言していたことが20日分かった。19日あった市議会全員協議会で、自らの報告案件が市議会に認めらなかったため発した。市議...
法務省は20日、2020年司法試験に1450人が合格したと発表した。前年より52人減少し、旧試験を廃止して新試験に完全移行した12年以降最少。政府が15年に下方修正した目標「1500人以上」を初めて...