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鉄板越し会話遠のく 広島お好み焼き「新しい生活様式」

2020/5/17
換気のため入り口を開けたまま営業する「かんらん車」=広島市中区(撮影・田中慎二)

換気のため入り口を開けたまま営業する「かんらん車」=広島市中区(撮影・田中慎二)

 鉄板前の席に座り、出来たての熱々を、へらで頬張るスタイルが人気の広島のお好み焼き。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除された広島県内のお好み焼き店は、客足の回復とともに「新しい生活様式」への対応に気をもむ。客が密接する鉄板前のカウンター席を撤去した店もある。広島を代表する食の風景が、新しい生活の波にさらされている。

 ミンチを使ったお好み焼きの「府中焼き」が看板メニューの「としのや」。店内に飲食スペースがある広島市内の全6店舗で鉄板前のカウンター席を撤去した。鉄板越しに客と会話しないようにするためだ。

 「焼き上がる過程を目の前でお客さまに見てもらい、店主らと会話も楽しむのもお好み焼き店の魅力。席の撤去は苦渋の決断だったが、やむを得ない」。運営するジブランド(中区)の吉岡忠晃社長(45)は声を落とす。

 人との間隔はできるだけ2メートル空ける、食事は横並びで座り会話を控えめにする…。政府の専門家会議は、そんな新しい生活様式の定着を呼び掛ける。

 小規模店ではしかし、対応は難しい。「混雑時には、どうしてもお客さん同士が密接する」とお好み焼き店「かんらん車」(同)の野間清美店長(63)。約25平方メートルの店内はカウンター席は8席、テーブル席は6席しかない。客の多くは鉄板前に陣取る。「鉄板で食べるのがおいしさの秘訣(ひけつ)の一つ。換気の徹底など、できることをやるしかない」

 「一銭洋食」がルーツとされ、戦後、原爆で傷ついた広島の人々のおなかを満たしたお好み焼き。総務省などの2016年経済センサスによると、お好み焼き店(焼きそば、たこ焼き店も含む)は広島県内に1605店あり、人口千人当たりの店舗数は全国トップ。自宅を改装し、地域に根差した個人経営の店も多い。

 繁華街にあり観光客にも人気の「お好み村」(中区)。ビルに入る24店は、いずれも鉄板を囲むカウンター席しかない。お好み村組合の豊田典正理事長(54)は「安心して来店してもらう取り組みとともに、持ち帰りにも力を入れていく」と話す。

 「地域では昔から持ち帰って食べる文化が根付いている。お好み焼きは鉄板で食べてほしいが、実はテークアウト向き。そこに活路を見いだし、広島観光の財産を守ってほしい」。お好み焼きと地域経済との関わりを研究する広島経済大の細井謙一教授(52)=経営学=は指摘する。(藤田龍治) 

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