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【ウエーブ】喜多流能楽師・大島衣恵さん(45)=福山市

2020/6/5
「気軽に能を語れる機会を増やしたい」。能舞台で面を手にする大島さん(撮影・井上貴博)

「気軽に能を語れる機会を増やしたい」。能舞台で面を手にする大島さん(撮影・井上貴博)

 ▽伝統、緩やかにチェンジ

 しんと静まりかえった能楽堂。1971年、祖父の大島久見が福山市光南町に建てた。その教えに従い、能舞台の床は、水にほんの少しの牛乳を混ぜて磨き上げる。「体の構え、足の運び、これをいかにやるかに能楽師は一生を懸ける」。舞台に立った能楽師のすり足によって、床の色は一部白けている。

 喜多流大島家の4人きょうだいの長女として生まれ、初舞台を踏んだのは2歳。祖父や父の教えを受け、能はいつでも身近な世界だった。一方で、江戸初期から続く喜多流に女性のシテ(主役)方はおらず、将来を模索した10代。「『女性だから』できないこともあり、能にどう関わっていくか考えていた」

 能楽全般を学ぶため、東京芸術大音楽学部邦楽科能楽囃子(ばやし)専攻に進んだ。能の世界とは縁のない生まれの仲間の情熱に触れ、「志を持てば私にもできる」と自信をつけた。卒業後に福山へ戻り、98年、喜多流で初の女性のシテ方になった。

 シテ方は鬼や化身といった人間ではない役になることが多く、能面が最も大事な道具だ。大島家には100枚以上が受け継がれている。それだけあれば事足りるが、新調もしている。「古い物もいいが、今の能面師に活躍してもらいたい」。伝統を継承していくには、舞台に立つ以外にも必要なことがある。
(ここまで 544文字/記事全文 1172文字)

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