地域ニュース

妊婦の不安、遠い収束 コロナ禍、育児のスタート「孤独」

2020/6/14 8:01
広島市内の妊婦。「感染者が減っている今でも万が一のことを考えると心配は尽きない」と語る

広島市内の妊婦。「感染者が減っている今でも万が一のことを考えると心配は尽きない」と語る

 コロナ禍の中で、妊娠・出産に直面する女性たちの戸惑いが続いている。全国で新型コロナウイルスの感染者が減り、職場は「通常モード」に逆戻り。広島県内でも、警戒を続ける妊婦の周りで感染への危機感は薄れている。里帰り出産は今も控えるように求められ、産婦人科に入院中の面会も制限される。孤独な育児のスタートに不安が募る。

【ダイジェスト】新型コロナウイルス感染拡大 危機の中の中国地方


 「飲みに行っちゃったよ」。同僚の会話を聞くと、広島市内の金融機関で働く30代の女性の心にさざ波が立つ。妊娠4カ月。手の消毒など自分でできる感染予防は徹底している。それなのに最近、周りの新型コロナ対策は緩んでいる。通勤電車もだんだんと密に。「出社する限り人混みを避けられない。うつさないでと願うしかない」

 ▽会議出たくない

 妊娠5カ月の西区の会社員女性(36)も、感染を心配しながら働く。先日は大人数の会議への出席を当然のように求められた。先月まではテレワークできたのに職場は通常勤務に一転。「万が一、感染したら赤ちゃんにどう影響するのか。会議に出たくないけど神経質と思われそうで…」とこぼす。

 今のところ感染で流産や早産のリスクが高まるという報告はない。だが厚生労働省は、妊婦の感染への心理的ストレスが母体や胎児の健康に影響する可能性を考慮する。感染を恐れる妊婦が、主治医や助産師の指導で職場の配慮を申し出たら、感染の恐れの低い作業への転換、在宅勤務や休業などの必要な措置を講じるよう事業主に義務付けた。

 しかし、企業にはあまり浸透していないようだ。県内のある助産師は、妊婦の相談を受けて「休ませるべきだ」という意見書を書いたが受け入れられなかった。「切迫流産のリスクの診断などがないと『不安感』ではなかなか理解されない」と憤る。

 女性の労働問題に詳しい寺本佳代弁護士(中区)は「妊婦の抱える不安は大きいが、言い出すには勇気がいる。そのことを事業者は理解して話し合い、最大限の配慮をすることが求められている」と指摘する。妊婦には、厚労省がコロナ対策のツールとして活用を勧める「母性健康管理指導事項連絡カード」を利用するよう呼び掛ける。広島労働局なども、妊婦や事業主の相談窓口を設けている。

 ▽「抱えず相談を」

 今年は出産環境にもコロナが影を落とす。日本産科婦人科学会などは緊急事態宣言の解除後も、里帰り出産をなるべく控えるよう呼び掛けている。広島県内でも県外の妊婦の出産を制限する医療機関が目立つ。西区の主婦(35)の通う産院は、県外の人に会うと2週間、院内に入れない。「極力、人を避ける生活を続けないといけない」と戸惑う。

 産後の入院面会が禁止されている産婦人科もある。7月に出産を予定する中区の会社員女性(27)は、「初めての育児なのにスタートから孤独になりそう」と打ち明ける。

 安田女子大の新川治子教授(母性看護学・助産学)は「未知のウイルスだけに妊婦さんは不安を感じやすい。一人で抱え込まず、普段通っている産婦人科や、助産所、母子健康手帳をもらった市町の窓口などに相談してほしい」と呼び掛けている。(久保友美恵、衣川圭) 

関連記事「乳幼児の集団健診、順次再開 交流縮小・「個別」移行で様変わり」

関連記事「子どもの距離、戸惑う現場 幼稚園や保育園、新生活様式守りたいけれど…」

関連記事「戸惑う『新しい生活様式』 上手に実践」

関連記事「妊婦に10万円給付 山口県周防大島町がコロナ支援」

関連記事「商品券で「子育て応援」 安芸高田市など、9月まで利用可」

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

同じ日のニュースの記事
一覧