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【クラスターとの闘い 障害者施設 見真学園の52日】<2>ラインで交流、心の支え

2020/6/16

見真学園職員のグループライン「頑張ろう見真!!」。全員陰性が確認された6月3日は喜びのコメントがあふれた=画像の一部を修整しています(撮影・高橋洋史)

 ▽「日々、状況が変わる。エリア分けに必死でした」

 ウイルスの感染拡大をいかに食い止めるか―。その鍵となるのは、安全区域と危険区域を分ける「ゾーニング」だ。見真学園(広島市佐伯区)のベテラン男性職員(60)は集団感染の発生直後から、その差配を任されてきた。「日々、状況が変わる。必死でした」

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 最初に感染した利用者6人は急ぎ、隔離した。が、日を追うごとに感染者が増えていく。その都度、陽性と陰性のグループを組み替え、それぞれの居住エリアと担当職員を決めた。

 ■迷う時間なし

 迷う時間はなかった。意向を確かめず、普段とは違うグループにはり付けた職員も多い。「苦労を掛けた。慣れるのに時間が要ったはずです」と男性職員。障害の特性から、見慣れない人に接すると不安定になる利用者もいるからだ。

 現場には社会に出たばかりの新人もいる。その1人は「自分のクラスの顔と名前が一致してきたと思ったら、集団感染が起きた」と振り返る。「利用者さんに不安な顔を見せまいと、ひたすら頑張る毎日でした」

 食事、洗濯、入浴、排せつ…。作業を別々にするための試行錯誤も重ねた。利用者は最終的に7グループに分かれたが、それぞれの居住エリアを分けるには浴室が足りなかった。職員はホースを何十メートルもつなぎ合わせ、即席のシャワー室をこしらえた。

 食堂の利用はやめ、部屋食に切り替えた。朝晩は弁当やパン。昼は温かい給食を続けたが、それも担当職員が運び入れ、使い捨て容器によそって出した。

 「行政の助言にも助けられた」と、施設責任者の男性職員(47)は振り返る。今も毎朝、市に借り受けた機材を使い、利用者の体温や血中の酸素量を測定。データを書き込んだ用紙を撮影し、その画像を佐伯区保健センターに送る。プロの目で細かい変化をチェックしてもらうためだ。

 ■防護の徹底も

 利用者の介助には「密接」が避けられない。防護の徹底も指示された。市からはガウンに加え、職員が手作りしたフェースシールドも寄せられた。

 壁にもぶつかった。エリアを分けており、職員も行き来できない。ある女性職員(53)は「他の職員と意思疎通できないのがつらかった」と明かす。自身は陰性者を担当。「陽性のエリアの状況が見えず、こちらの悩みを口にするのもはばかられて…。不安だったし、ストレスでした」

 助けになったのは、無料通信アプリLINE(ライン)だ。発生8日後の4月21日、職員の間で使い始めた。すると、スマートフォンの画面を通じ、他のグループの様子が分かるようになった。入院中の利用者の動画が投稿されると、元気な姿に力が湧いた。

 6月3日。そのグループラインに「オール陰性」の通知が届いた。「よっしゃあー!!」「泣きそう!!」。あっという間に画面が喜びの声で埋まった。

 エリアを分けた自粛生活は、今月末までを予定している。利用者や職員が顔を合わせて一緒に喜べる時が、日ごとに近づいている。(田中美千子) 

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この記事の写真

  • 園内の洗濯機。陽性と陰性で使い分けた(撮影・高橋洋史)
  • 職員寮にずらりと干されたガウン(撮影・高橋洋史)

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