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【クラスターとの闘い 障害者施設 見真学園の52日】<4>エール、非難の何十倍も

2020/6/18

広島市東区の小学生から見真学園に寄せられた手作りマスク。激励の手紙が添えられていた(撮影・高橋洋史)

 ▽「届いた布マスク。眺めるだけで元気が湧く」

 「コロナにまけないで がんばってください」。便箋には幼い字で、そうつづられていた。差出人は「ひがしくしょうがくせい」。母親と一緒にこしらえたという愛らしい布マスクが、何枚も添えられていた。

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 「使うのがもったいなくて。数枚、残してあるんです」。そっと手に取り、見真学園(広島市佐伯区)の施設責任者の男性職員(47)はほほ笑んだ。「眺めるだけで元気が湧きます」。写真に収め、同僚の携帯電話にも画像を一斉送信した。

 クラスター(感染者集団)の発生後、学園には激励の手紙やメール、電話が数え切れないほど寄せられた。防護服、消毒薬、飲み物…。物資も次々と届いた。「世間と隔絶された空間にいる私たちには、こういった温かい応援が何よりの励みでした」

 ■電話がやまず

 闘いが始まった当初はむしろ、逆風の方が強かった。4月14日、学園はホームページ上におわび文を掲載。感染の事実を自ら公表した。「社会的責任がある。覚悟を決めた」と、この男性職員は言う。しかし、その日から数日間、学園の電話はひっきりなしに鳴った。

 「どうしてくれるんだ」「職員に謝罪会見させろ」。ヒステリックな声が心に突き刺さる。「不安を与えた。申し訳ない」。謝り続け、受話器を置いた途端、また鳴り始める―。職員の1人は「丸腰なのに銃を突き付けられた気分だった」と明かす。

 園内に残り、必死に利用者のケアに当たっていた女性職員(53)は、悲しみと同時に不安が募った。浮かんだのは家族の顔。「どんなに肩身が狭いだろう」。申し訳なさがこみ上げた。

 ■家族が支えに

 心の重しを取り払ってくれたのは、その家族だ。「大丈夫だから。仕事に専念して」。夫や娘の電話の声は力強かった。学園に向けられる誹謗(ひぼう)中傷を本気になって怒ってくれた。聞けば、夕食のおかずを届けてくれるご近所さんもいるらしい。「本当にありがたくて。頑張ろうと思えました」

 自らも陽性となった男性職員(60)は、もう2カ月以上、園内の職員寮に泊まり込んでいる。心の支えはやはり、自宅で待つ家族だ。

 集団感染のピークが過ぎ、園内が落ち着いてくると、妻の手料理が届くようになった。総菜だったり、手作りスイーツだったり。「配達係」の娘は施設に立ち入れないから、近くの木にぶら下げてくれる。いつもの味にほっとする。

 52日の闘いのそばには、非難の何十倍ものエールがあったのだという。学園が外部との接触を絶ち、自粛生活を続けるのは今月末まで。「日常に戻った時、地域は迎え入れてくれるだろうか」。そんな不安がよぎると、職員たちは食堂の外壁にかけた千羽鶴を眺める。

 贈り主は「佐伯区のおばちゃん有志一同」。同じ差出人から再三、絵手紙も届いた。「良い方に考えよう」「笑顔が一番」。季節の花などの絵にいつも、温かい言葉が添えてあった。

 6月3日に園内の感染者がゼロになった後、メンバーの1人がまた、便りをくれた。「学園のこれからの幸せを祈り、一緒に送ります」。孫が摘んだという四つ葉のクローバーが包まれていた。(田中美千子) 

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この記事の写真

  • 学園の外壁につるした千羽鶴。利用者の胸に明かりをともす(撮影・高橋洋史)

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