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【西日本豪雨2年】消防団員、悔しさ胸に救命技術磨く

2020/6/23
大原ハイツで負傷者を救出した当時の状況を振り返る丸井さん

大原ハイツで負傷者を救出した当時の状況を振り返る丸井さん

 2018年7月に襲った西日本豪雨の月命日の今月6日、広島県熊野町の消防団員丸井泰昭さん(55)は、12人が亡くなった同町川角地区の団地「大原ハイツ」に赴いた。当時、救助や捜索に当たった現場に立ち、団員の使命を胸に刻む。

 丸井さんは広島バス(広島市中区)の運転手。豪雨当日の7月6日、仕事は休みだった。町内に避難勧告が出た午後7時ごろ、所属する消防団第8分団の消防車で、地元の川角地区を回っていた。激しい雨が防災無線の音を遮る。「坂の上の大原ハイツが危ない」。団長の指示でルートを変え、大原ハイツへ向かった。

 土砂を含んだ水が滝のように坂を流れ、運転に慣れた丸井さんでも「流されるかと思った」。大声で避難を呼び掛け、一巡して隣の地区に着いた直後、分団長の電話が鳴った。町職員から「大原ハイツが…」。引き返すと5分前に通った道は土砂で埋まり、車から漏れたガソリンで炎が上がっていた。急いで避難誘導をし、周囲にあったベニヤ板などで作った即席の担架で負傷者を運び出した。

 丸井さんの自宅や家族は被災を免れ、翌朝から行方不明者の捜索に当たった。遺体が見つかるたびに「もっと早く避難を呼び掛けていれば」と胸を痛めた。自分に何ができるかを問い、消防団員としてのスキルを高めることを誓った。救命講習などを受け、今年3月に防災士の資格を取った。

 人命救助への思いをさらに強める出来事があった。5月下旬、バス乗務の合間に広島港(南区)の休憩所にいた時、近くで高齢男性が心肺停止状態で倒れているのを知り、すぐに現場へ。救急車が来るまで心臓マッサージを続けた。ただ、搬送された男性は、一度は心臓が再び動きだしたものの、その後亡くなった。

 悔しさが募り、より高度な救命措置を学ぶ上級救命講習を受けようと決意した。講習は9月にある。「助けられる命を増やしたい」。将来的には、救命講習を指導する応急手当普及員の資格取得も目指し、社内や地域で救命講習を開きたいとも考えている。

 新型コロナウイルスの影響で、熊野町の豪雨関連の追悼式などは軒並み中止が決まった。豪雨から2年となる7月6日、丸井さんは大原ハイツで手を合わせるつもりだ。土石流で流される直前の現場を見た者として次の世代に語り継ぐと約束するために。(猪股修平)

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