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【1億5000万円を聞く 前法相夫妻起訴】責任取らぬ安倍政権、背景に 法相起用はブラックユーモア 東京大名誉教授・御厨貴さん

2020/7/8 23:37

「事件と『何でもあり』の政治風土をもたらした安倍政権の8年間は無関係ではない」と語る御厨さん(オンライン取材)

 ―昨夏の参院選広島選挙区を巡り前法相の河井克行被告(衆院広島3区)と初当選した妻案里被告(参院広島)が逮捕、起訴された大規模買収事件をどう見ますか。

 与党でも改選2議席の独占は至難の業。どこから票を集めてくるかというと結局、同じ自民党で岸田派重鎮である溝手顕正氏の票を削り取るしかない。それであれだけの金を地方議員らに配ったのは(衆院の)中選挙区制時代の感覚に戻ったかのようだ。

 本人が「安倍さんから」と言って配る。すぐ捕まりそうなことをしたのが不思議だ。もらった方も方で、広島県政界はどういう構造になっているのかと思う。

 ―参院選の公示前、党本部から夫妻側へ1億5千万円が提供されました。溝手氏への提供額と一桁違います。差は何でしょうか。

 安倍政権は「お友達内閣」と言われ、安倍晋三首相のため汗をかいている人に必ず優遇措置がある。この事件だと妻を擁立するから金と人(秘書派遣など)の両面で支援する。克行被告の「期待に応えなくては」との思いがばらまきにつながったのではないか。当選すると、たちどころに大臣で処遇された。法相起用はブラックユーモアだ。

 ―このうち1億2千万円は、税金などで賄う政党交付金であることが判明しています。

 買収に直接使われたかどうかは捜査を待たないといけないが、金に色は付いてない。政党交付金の制度ができた時、税金なら変なことに使わないという倫理観が前提だった。それが何十年続いて薄れたのか。想定外の事件が起きた以上は透明性を高める必要がある。

 ―克行被告はどんな政治家でしょう。

 自民党が野党時代、民主党政権追及の急先鋒(せんぽう)となる一方で派閥を離れ、当時の党執行部の運営を「旧態依然」と批判して目立っていた。2012年の総裁選で安倍氏を応援し、与党に戻った瞬間に政権中枢へ一直線に結びついた印象だ。

 野党を経て自民党は「いつまで与党でいられるか分からない」となった。中枢に近づかなければ駄目だ、権力を持たなければ何もできない、との感覚も生まれた。克行被告はそれがむき出しだったイメージだ。

 ―安倍首相は「党総裁として国民に対する説明責任を果たしていかなければならない」と述べましたが、その姿勢が見えません。

 安倍首相は森友・加計学園問題などスキャンダルが出るたび、「徹底的に解明する」と言いながら最終的に何も説明しない。そうこうするうちに次の問題が出てくる。しかも幾つか重なったところで必ず選挙がある。総選挙でも参院選でも勝てばチャラでしょ、と。

 ―「責任」という言葉が本当に軽くなっていませんか。

 閣僚が不祥事で辞めても「任命責任は私にある」と言うだけで、責任を取る気は全然ない。説明責任も果たさない。安倍政権の8年で何でもありの政治風土になった。今回の事件と決して無関係ではない。

 安倍政権は事件を個別の問題にするだろう。「河井君もやり過ぎたね、気の毒だけど」って。国民は「また言っている」と物わかりがよくなってはならない。「責任」を口にした以上は「責任を取りなさい」と追及しないといけない。(聞き手は山中和久)

 みくりや・たかし 51年東京都生まれ。東京大法学部卒。東京大教授などを歴任。天皇陛下の退位を巡る政府有識者会議座長代理を務めた。専門は日本政治史。政治家たちから聞き取り調査を重ねる「オーラルヒストリー」の第一人者。著書に「権力の館を歩く」など。


【シリーズ「1億5000万円を聞く」】

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