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【激震 前法相夫妻起訴】受領者不問に疑義の声 「もらい得」検察批判も

2020/7/8 23:04

広島地検が入る広島法務総合庁舎(広島市中区)

 広島県政界を揺るがす大規模買収事件は8日、検察当局が前法相の河井克行被告(57)=衆院広島3区=と妻案里被告(46)=参院広島=を公選法違反罪で起訴した。現金を受け取った地方議員ら100人全ての刑事処分を見送る方針を固めており、安堵(あんど)の表情を見せる議員も。一方で、市民からは被買収者の政治家の処分を求める声も上がっており、世論が「検察批判」に傾く可能性もある。

【特集】河井克行・案里夫妻 買収事件


 「起訴すべきものは起訴した」。東京地検特捜部の幹部は8日、両被告の起訴を報道陣に発表する場で被買収者の処分を問われ、こう答えた。同時刻には、合同で捜査してきた広島地検の幹部も報道陣に同じ言葉で「不問」をにおわせた。

 関係者によると、すでに検察庁内では被買収者全員の刑事処分を見送る方針を固めている。両被告から一方的に現金を渡された人が多く、一部は受領後に返した点も考慮したとみられる。

 刑事処分を待たずに辞職した首長は複雑な心境を明かす。「検察から連絡もなく分からない」。克行被告から20万円を受け取った広島県安芸太田町の小坂真治前町長(71)と、計150万円を受領した三原市の天満祥典前市長(73)は言葉少なに語る。計60万円を渡された安芸高田市の児玉浩前市長(57)は「(辞職で)けじめをつけた。司法の判断を待ちたい」と話す。

 ▽処遇に気もむ

 公選法では、買収目的の現金を受け取った側も罪に問われる。罰金刑以上が確定すれば公民権停止となり、首長や議員は失職する。政治生命に直結する問題だけに、現金授受を認めた地方議員の多くは、自身の処遇に気をもんできた。

 「まな板の上のコイ。いつまで生殺しの状態が続くのか」。克行被告から計50万円を受け取った広島市議は検察から処分の連絡がないことに不満を募らせる。克行被告が置いて帰った30万円を参院選前に返却した県議は「(立件見送りは)適正な判断だと思う」と安心した様子をみせた。

 被買収側の不問は、当初から地元議員の間でうわさされていた。計50万円の受領を認めた広島市議は「検事から『夫妻が目的。先生には政治家を続けてもらいたい』と言われた」と説明。別の県議も「検事は『あなたを罪に問いたいわけではない』と話していた。処分はないだろうと思っていた」と打ち明ける。

 100人の被買収者のうち地元政治家は40人を超えるとみられ、200万円をもらっていた県議もいる。案里被告からの現金提供を拒んだという議員は「おとがめなしなら、もらい得じゃないか」と検察の姿勢を疑問視。ある県警幹部も「県警は地方選挙での一般人の数万円の授受でも被買収で刑事罰を取ってきた。納得できない」と語った。

 刑事罰を取りたくないなら、個別に悪質性などを判断し、起訴猶予で不起訴にする方法もある。県議らの相談を受ける弁護士は「検察審査会を警戒しているから、刑事処分をしないのではないか」と推察する。

 審査会では、犯罪の被害者や告発者からの申し立てに基づき、有権者から選ばれた審査員が不起訴処分の妥当性を審査する。「起訴相当」と議決されれば強制的に起訴されるほか、「不起訴不当」でも検察は再捜査で起訴するかの判断を迫られる。一方で、刑事処分が出ていない案件は申し立ての対象にすらならない。

 ▽「罪免れない」

 ただ、東京地裁である両被告の裁判では、被買収者の名前が明らかになる可能性が高い。検察側から法廷での証言を依頼された議員もいる。今後、被買収者を刑事告発する動きが出てくる可能性もある。

 買収疑惑が出た昨秋に両被告を広島地検に告発した広島市の市民団体の山根岩男事務局長(69)は「現金の多い少ないに関係なく、受け取った側も罪を免れない。今後、対応を検討したい」と話している。

 ■起訴権の乱用 元検事で広島地検特別刑事部長などを務めた郷原信郎弁護士の話 

 被買収側を刑事処分しないのは、極めて異例の対応と言わざるを得ない。買収の犯罪が成立するならば、被買収側も起訴されて当然だ。最低でも罰金だろう。公選法違反罪の捜査は司法取引の対象外だが、被買収側と「立件しないから証言してほしい」という事実上の取引があったと疑われかねない。検察側が起訴にも不起訴にもしないのは、不起訴処分にすることで検察審査会へ申し立てられるのを恐れているのではないだろうか。起訴権の乱用だ。

 ■説明責任ある 日本大の岩井奉信教授(政治学)の話 

 検察は数十万円程度の被買収者を立件せず、(前法相の買収という)巨悪を優先しようとの考えかもしれない。だが、100万円を超す現金を受け取った議員もおり、被買収側の全てを起訴しないのは納得できない。同じように現金を受け取った後援会員と違い、政治家には説明責任がある。記者会見をした議員で買収の趣旨を明確に認めた人は少なかった。今後、両被告の裁判で明らかになる証言と食い違う可能性もある。有権者は厳しくチェックしなければならない。

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  • 克行被告らの起訴を発表した東京地検が入る法務検察合同庁舎(東京都千代田区)

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