現金受領、議員の責任は 広島県・市議会、調査に後ろ向き
前法相の河井克行被告(57)=衆院広島3区=と妻の案里被告(46)=参院広島=が起訴された大規模買収事件で、現金を受け取ったとされる議員を多く抱える広島県議会や広島市議会の対応が焦点となっている。検察当局が被買収者の刑事処分を見送る方針の中、「独自調査によって真相解明や責任追及を果たし、信頼回復を図るべきだ」との声は内外にあるが、今のところは両議会とも後ろ向きだ。
▽「起訴されないのに無理」
案里被告が初当選した昨年7月の参院選広島選挙区を舞台とする大規模買収事件で両被告が起訴された8日、県議会の中本隆志議長は議長室で報道陣と向き合っていた。現金を受け取った県議の独自調査について「検察が起訴しないのであれば法律に触れていない。そういう人を問い詰めることはできない」と答え、否定的な考えを示した。
夫妻が逮捕された6月18日の取材では「視野に入れなければならない時期に来ている」と答えており、前向きだった姿勢を大きく後退させた格好だ。その理由については「受領議員の逮捕や起訴を念頭にした発言だった」と釈明している。
▽条例適用なるか
中国新聞の取材では、県議11人が両被告から計560万円の現金を受け取ったと証言し、ほかにも複数人が該当するとされる。県議の間では「選挙で選ばれた議員には疑惑を説明する責任がある。口をつぐみ続けるなら議会として調査するべきだ」「検察が立件できない以上、責任追及は無理」との意見が交錯する。
県議会では過去にも現金授受疑惑があった。藤田雄山前知事の後援会の政治資金不正事件で、前知事陣営が知事選で県議たちに対策費を渡す「あしき慣習」があったとされた。県議会は2006年、県議10人でつくる調査会を設けて実態の解明を目指したが、真相は明らかにできなかった。
結果として07年に政治倫理条例を制定し「公正を疑われるような金品の授受」を禁じた。違反の疑いがある場合は実態を調べる審査会を設け、違反を認定すれば辞職勧告できる規定を設けている。初めて適用するかどうかを含め、自浄能力を試される。
▽辞職勧告も注目
中国新聞の取材に9人が計390万円の受領を認めた広島市議会。各会派の幹事長は6月26日、市議会としての対応を非公開で協議した。複数の出席者によると、山田春男議長が「各会派で受領の有無などを事実確認してほしい」と提案したが、動きは鈍い。
実名で認めた5人が所属する自民党系の3会派のうち、自民党市民クラブの宮崎誠克幹事長は「議員自らが説明する問題」との立場を取る。自民党保守クラブの森畠秀治副幹事長は「今は、本人の言い分を信じるしかない」、市政改革ネットワークの竹田康律幹事長は「議員それぞれに背景が違う。支援者がどう判断するかが重要だ」と言う。
自民党系会派を尻目に、共産党は、近く開会する予定の臨時会に、受領市議に対する辞職勧告決議案を出すと表明した。受け取っていないとする市議の間では「同じ議員というだけで疑われている」などの批判が渦巻く中、決議案への支持がどこまで広がるのかが当面の注目点となる。
広島大大学院の小池聖一教授(政治学)は「刑事処分がなくても、責任が不問になったわけではない」と説く。不正な現金を収めた議員の倫理上の責任は大きく、県民に事実を説明するのは当然とした上で「同じ事態を繰り返さないためにどんな方策が取れるのか、議会として真剣に考えるべきだ」と指摘している。
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