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重富寛(しげとみ・ゆたか) とりあえず生!(2016年7月22日掲載)
「とりあえずギャップ」をご存じですか。これは何げなく日常に存在し、あなたの人生を左右する重要な一瞬なのです。
以前は「とりあえず生ビール」という言葉が嫌いでした。ビール注ぎとして時間をかけ準備し丁寧に注ぐのを、「とりあえず」と注文されることに苦笑い。「もう、とりあえずとは言わせない」と、ビールの地位向上のため5千年の歴史をひもとき、勉強しました。しかしすればするほど、「とりあえず」が魔法の言葉に感じ始めてきたのです。
仕事を終えてこられたお客さまの約8割が生ビールを最初に注文されるそうです。メニューも見ずに「とりあえず生!」。この「とりあえず」の意味は考えるとこうなんでしょう。「この一杯のために仕事を頑張ってきたよ。夕方から水分補給もせずに。さあ、よく冷えたうまい生を、つまみはいいから大至急!」
ただ、飲食店側から見るとこんなことも。「おい、今日入ったバイト、生ビールくらい注げるな。うーん、ジョッキはまだ冷えてないけど、まあいい。客が『とりあえず』と言っているんだ。適当にビール注いで出しておけ。俺は仕込みで忙しい」
これが「とりあえずギャップ」です。お客さまの期待感と店の落差が大き過ぎますね。100メートル走のスタートでコケるようなもの。挽回には超人的な技量か、割引が必要です。ワインや日本酒、ウイスキーは「とりあえず」にはなりません。スタート=乾杯は、ビールにだけ与えられた役割なのです。
大方がその夜、最初に飲むのがビールです。うまくなくては仕事の疲れも取れません。その蓄積が経済の停滞を招く小さくて大きな原因だ、とさえ考えるのです。
とりあえずの生を最高のクオリティーで提供したい。きめ細かな泡と喉越しがストレスを吹き飛ばし、暮らしを豊かにするはず―。はかなく消えたバブル経済のようなものではなく、ビールの泡はずっと続く幸せを運ぶと信じ、今日もサーバーの前に立っています。(ビールスタンド重富店主=広島市)
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